Last Updated on 2026年11月6日 by contact@konnors.net
夜、リビングでくつろいでいるときや、これから眠りにつこうとする静かな時間に突然、「あそこの壁に知らない人が立っている」「布団に虫が這っているから取って!」と真剣な表情で訴えられる——。
最初は「そんなものいないよ」「見間違いでしょう」と優しく説明していたはずなのに、何度言っても納得してもらえず、しまいには「そんなのいないって言ってるでしょ!」と怒り出してしまう。
まず最初にお伝えしたいのは、つい否定してしまったり、イライラしてしまったりするのは、あなたが冷たいからではなく、一生懸命に向き合っているからこそ起きる自然な反応だということです。ご自身を責める必要はまったくありません。
レビー小体型認知症の「幻視(実際にはないものが、すぐそこにあるように生々しく見える症状)」は、ちょっとした部屋の明るさや影のつくり方を見直し、「否定しない声かけ」のコツを知るだけで、ご本人の恐怖や混乱が和らぐ可能性があります。
この記事では、介護現場で多くのご家族と伴走してきた私たち「リコケアコナーズ」が、専門的な仕組みをわかりやすい日常の言葉に噛み砕きながら、今夜から無理なく試せる具体的な接し方と環境づくりの工夫をお伝えします。
この記事でわかること
- レビー小体型認知症で幻視がリアルに見える理由と、身体症状(すくみ足など)との関係
- 「否定しない」とは?「虫が見える」「壁に人がいる」と言われたときの声かけ実例
- 幻視の引き金になりやすい「照明・部屋環境」の整え方
- 主治医の診察時に役立つメモの取り方と、専門機関への相談の目安
発信者:リコケアコナーズ
菅原浩平(主任ケアマネジャー、介護福祉士)
菅原嘉奈(ケアマネジャー、介護福祉士、認知症リハビリテーション専門士)
なぜレビー小体型認知症では「虫」や「人」がはっきり見えるのか?

対応の工夫を知る前に、「なぜご本人にはそんなにはっきりと見えているのか」を少しだけ紐解いておきましょう。
理由がわかると、ご家族の「なんでそんなことを言うの?」という戸惑いがスッと軽くなります。
本人にとっては「ウソ」ではなく「そこにある現実」
レビー小体型認知症の代表的な特徴のひとつが、具体的な形をもった「幻視(げんし)」です。ご家族を困らせようとしてウソをついているわけでも、気を引こうとしているわけでもありません。
ご本人の目には、私たちが今目の前のテーブルやテレビを見ているのとまったく同じくらい、鮮明で立体的な「現実」として映っています。
脳の視覚を処理する部分の誤作動
私たちの脳は、目から入ってきた光の情報を、脳の後ろ側(後頭葉など)で「これは模様だ」「これは人間だ」と組み立てて認識しています。
レビー小体型認知症では、この「見た情報を正しく処理する脳のネットワーク」に誤作動が起きやすくなります。
その結果、実際にはそこに存在しない「小さな虫」「小動物」「知らない子どもや大人」「亡くなったはずの親族」などが、まるで映像を投影したかのように浮かび上がってしまうのです。
シミや影が別のものに見える「錯視(見間違い)」の仕組み
何もない空間に突然見えることもありますが、現場で非常によく見られるのが「そこにある別のものが、人や虫に化けて見える」という現象です。
専門的には「錯視(さくし)」や「パレイドリア」と呼ばれます。
たとえば、ご家庭のこんな風景が引き金になります。
- 壁紙の小さなシミや、床の木目の節が「動いている黒い虫」に見える
- カーテンのひだの影や、壁に掛けてあるコート・帽子が「部屋の隅にじっと立っている人」に見える
- 電源タップの黒いコードが「ヘビ」に見える
このように、目から入ったあいまいな情報(影や模様)を、脳が勝手に「虫だ!」「人だ!」と補完して作り変えてしまうのが大きな特徴です。
調子が良い時と悪い時の波や「すくみ足」との関係
ご家族をさらに悩ませるのが、「さっきまで普通に会話していたのに、急に別人のように混乱し始める」という変化ではないでしょうか。
レビー小体型認知症には、頭がはっきりしている時間と、ボーッとして注意力や理解力が落ちる時間(日中にうつらうつらと眠り込んでしまう「傾眠(けいみん)」と呼ばれる状態など)が1日の中で激しく入れ替わる特徴があります。
頭がボーッとしている時間帯や、夕方から夜にかけて脳が疲れてくる時間帯ほど、幻視が強く現れやすくなります。
また、手足のこわばりや小刻み歩行、最初の一歩が出にくくなる「すくみ足」といったパーキンソン病に似た身体の症状(パーキンソニズム)を伴うことも少なくありません。
「足元に虫がいる!」と驚いて後ずさりしようとした瞬間、すくみ足で足がうまく動かずにバランスを崩し、転倒してしまうリスクがあるため、心のケアと同時に足元の安全を守る視点もとても大切になります。
【シーン別】幻視を否定しない具体的な接し方と声かけの工夫

本やインターネットで調べると、必ずと言っていいほど「幻視は否定しないようにしましょう」と書かれています。
でも、いざ目の前で「そこに人がいる!」と言われたとき、「否定しないって、つまりどう返事すればいいの?『私にも見えるよ』とウソをつけばいいの?」と迷ってしまいますよね。
「否定しない=嘘に合わせる」ではなく「不安な気持ちを受け止める」
リコケアコナーズがご家族にお伝えしている大切な原則は、「見えている『事実(物の存在)』を無理に肯定するのではなく、それが見えて『怖い・気持ち悪いと感じているご本人の気持ち』を肯定する」ということです。
ご家族まで「本当だ、あそこに怖い人がいるね!」と過剰に話を合わせてしまうと、ご本人は「やっぱり本当に侵入者がいるんだ!」とますます恐怖心を強めてしまうことがあります。
逆に「誰もいないよ、頭がおかしくなったんじゃないの?」と否定すれば、「こんなにはっきり見えているのに、家族は自分を騙そうとしている」と孤立感を深めてしまいます。
目指すゴールは「幻視を消すこと」ではなく、「ご本人が『家族が味方でいてくれるから大丈夫だ』と安心できること」です。
よく起こる2つの場面で、具体的な対応を見ていきましょう。
ケース1:「床や布団に虫が見える」と訴えられたときの対応
小さな虫が這っている、ハエが飛んでいるといった幻視は、不快感や気味の悪さを伴いやすいものです。
恐怖を取り除く声かけと「一緒に払う・片付ける」アクション
まずはご本人の視線の先を一緒に見ながら、驚いている気持ちを受け止めます。
- 避けたい声かけ:「虫なんてどこにもいないよ」「それは床のゴミでしょ、よく見て」
- おすすめの声かけ:「本当だ、嫌なものがいると気持ち悪いね。今すぐ私が払っておくから大丈夫よ」
そのうえで、実際にティッシュや粘着ローラー(コロコロ)、ほうきなどを使って、ご本人が指差す場所をサッと拭き取る・払い落とす動作をしてみてください。
“ふり”でかまいません。
「パッと捕まえてゴミ箱に捨てたよ」
「殺虫剤(実際には消臭スプレーや水を霧吹きに入れたもの)をシュッとしておいたから、もう来ないよ」
と視覚的に「退治した・片付けた」という区切りを見せることで、脳が納得してスッと落ち着くことがよくあります。
どうしても納得しないときは場所と視線を変える
払う動作をしても「まだあそこから出てくる!」と興奮が収まらないときは、その場に留まり続ける限り脳の誤作動がリセットされません。
「お掃除して空気を入れ替えるから、向こうの部屋で温かいお茶を飲んで待っていてくれる?」と声をかけ、別の部屋へ移動して視界に入る情報をガラリと変えるのが効果的です。
布団の柄が虫に見えている場合は、無地の明るい色のシーツやタオルケットを上からサッと掛けてしまうのもひとつの手です。
ケース2:「部屋の隅や壁に人がいる」と言われたときの対応
「知らない人が立っている」
「子どもが座っている」
と言われたときは、まずご本人の表情を観察することから始めます。
「怖いのか」「気にならないのか」本人の表情を観察する
実は、レビー小体型認知症の幻視では、人が見えていてもご本人が「ああ、またあそこに座っているな」と特に怖がらず、穏やかにやり過ごしているケースも少なくありません。
ご本人が落ち着いているなら、無理に話題を掘り下げず、「そうなんですね、でもお父さんに悪さはしないから大丈夫ですよ」とさらりと受け流して問題ありません。
一方で、表情がこわばり、「泥棒が入ってきた」「じっと見られていて怖い」と怯えている場合は、安心感を届ける関わりが必要です。
触覚(手で触れる)や安心できる声かけで現実感を届ける
視覚(目からの情報)が誤作動を起こしているときは、「聴覚(穏やかな声)」や「触覚(温かい手のぬくもり)」といった別の感覚から安心を届けると、現実の世界に戻りやすくなります。
- 具体的なアクション:
ご本人の背中や肩、手にそっと触れながら、「びっくりしたね。でも私がすぐ隣にいるから絶対大丈夫よ」「ちょっと私が向こうを確認して、帰ってもらうように言ってくるね」と落ち着いたトーンで伝えます。 - 壁や対象物に近づいて触ってみる:
もし壁に掛かった洋服やカーテンの影が人に見えている場合は、部屋の電気を明るくしたうえで、ご家族がそこまで歩いていき、その洋服や壁に直接触れてみせます。
「ほら、私が触っても動かないでしょう?ここは壁(お父さんの上着)だから安心してくださいね」と実演して見せると、「なんだ、服だったのか」と腑に落ちることがあります。
幻視への驚きと「すくみ足」が重なる転倒リスクへの備え
夜間にトイレへ起きた際、「廊下に人がいる」「足元に動物がいる」と驚いて立ち止まったときに特に注意したいのが、先ほど触れた「すくみ足」です。
レビー小体型認知症の方は、恐怖や焦りを感じると、足の裏が床に張り付いたように一歩が出なくなる「すくみ足」が強く出やすくなります。
足が止まっているのに上半身だけ避けようとして前のめりになり、大きく転倒して骨折につながるケースが少なくありません。
- 夜間の動線には物を置かない:
廊下やトイレまでの道筋には、影をつくりやすい観葉植物や傘立て、スリッパなどを置かず、すっきりさせておきます。 - すくみ足が出たときの声かけ:
焦って「早く歩いて!」と引っ張るのは禁物です。まずは腕や背中を支えて安心させ、「いち、に、いち、に」とリズムよく声をかけたり、「この床の線をまたいでみようか」と具体的な目印を示したりすると、最初の一歩がスッと出やすくなります。
今日から家庭で試せる!幻視を引き起こしにくくする環境づくり

リコケアコナーズがご自宅へ訪問し、ご家族と一緒に部屋を見渡してみると、「実は部屋の環境が幻視のスイッチを押していた」と気づくことが本当によくあります。
声かけを頑張る前に、まずは幻視が起きにくい部屋づくり(環境調整)を取り入れてみましょう。
夕方の薄暗がりをなくす「照明」の工夫
幻視や見間違いがもっとも多くなる時間帯は、夕方の薄暗くなり始める時間(夕暮れ時)から夜間にかけてです。
部屋の中に「明るい場所」と「暗い影の部分」のコントラストができると、脳がその暗い影を「人」や「虫」に作り変えてしまいます。
| 場面・場所 | 具体的な照明・明るさの工夫 |
| 夕方(日が暮れる前) | 部屋が薄暗くなる前(15時〜16時頃)に、早めにお部屋の照明をつけ、カーテンを閉めて外の暗さを遮断する。 |
| リビング・居室 | 電球色(オレンジ色の落ち着いた光)よりも、影ができにくく部屋全体が均一に明るくなる昼白色・昼光色の照明にするか、間接照明を足して部屋の四隅の暗がりをなくす。 |
| 就寝時・トイレ動線 | 真っ暗にすると不安が強まり、逆に豆電球だけだと天井や壁に不気味な影ができることがある。足元だけを優しく照らすセンサーライトやフットライトを活用する。 |
壁のシミ・カーテンの影・掛けてある洋服を見直す(模様替えのポイント)
ご本人がいつも決まった場所を指差して「あそこに人がいる」「虫がいる」と言う場合、その視線の先に必ず「引き金になっている物」があります。
ご本人が座っている椅子やベッドの位置に実際に座ってみて、同じ目線で部屋を見渡してみてください。
- 壁に掛けた洋服・帽子・カレンダーを外す
ハンガーに掛けたコートや帽子は、薄暗い中では「立っている人間」そのものに見えます。衣類はクローゼットやタンスの中にしまい、壁にはできるだけ何も掛けないようにします。
また、人物の顔が大きく載っているポスターやカレンダー、鏡(鏡に映った自分や家族を「知らない人がいる」と認識してしまうことがあります)も、布を掛けるか外しておくと安心です。 - カーテンや布団は「無地」で明るい色を選ぶ
細かい花柄や幾何学模様、濃い色のドット柄などは、小さな虫の群れや人の顔に見えやすい代表例です。
カーテンやシーツ、パジャマなどは、シンプルな無地で温かみのある明るい色(ベージュやパステルカラーなど)に変えるだけで、訴えが減ることがあります。 - 壁のシミや床のキズ・ゴミを隠す
「いつも同じ場所の床に虫がいると言う」という場合、フローリングの黒い節や小さなキズ、落ちている糸くずが原因かもしれません。
こまめに掃除機をかけるほか、気になる床の模様の上には無地のマットを敷く、壁のシミには同じ色の補修テープを貼るといった工夫が有効です。
日中の覚醒リズムと体調管理(便秘や脱水、眠気への配慮)
お部屋の環境と同じくらい大切なのが、ご本人の「身体のコンディション」です。レビー小体型認知症の幻視は、脳の働きが低下したときに強く出ます。
- 水分不足(脱水)を防ぐ:
水分が足りなくなると、脳への血流が落ちて頭がボーッとしやすくなり、幻視や混乱が急に強まります。
お茶や水だけでなく、ゼリーや果物、お味噌汁などからこまめに水分を摂りましょう。 - 便秘の解消:
レビー小体型認知症では自律神経の働きが乱れやすく、頑固な便秘になりやすい特徴があります。お腹の不快感は夜間の不眠や幻視の悪化に直結するため、排便リズムを整えることも立派な幻視対策になります。 - 日中の穏やかな刺激:
日中ずっとテレビもつけずにウトウトと眠り続けていると、夜に目が冴えて幻視が出やすくなります。
午前中にカーテンを開けて日光を浴びたり、体調に合わせてデイサービス等で他者と交流したりして、日中の覚醒リズム(起きている時間)を保つことが大切です。
受診時に主治医へどう伝える?薬の調整に役立つ「記録の取り方」

環境を整え、声かけを工夫しても、ご本人が幻視に強い恐怖を感じて夜も眠れないような場合は、お薬の力を借りて症状を和らげることも検討されます。
ただし、ここにはレビー小体型認知症ならではの重要な注意点があります。
レビー小体型認知症は薬に敏感(自己判断での調整は禁物)
レビー小体型認知症の方は、お薬に対して非常に敏感に反応しやすい(薬剤過敏性)という体質を持っています。
たとえば、「幻視を消すためのお薬」や「気持ちを鎮めるお薬」が少しでも強すぎると、今度は手足がガチガチにこわばって歩けなくなったり、すくみ足が悪化して転びやすくなったり、一日中眠り続けて食事が摂れなくなったりすることがあります。
逆に、動きを良くするパーキンソン病のお薬を増やしすぎると、幻視が強く出てしまうこともあります。
このように「幻視を抑えること」と「身体の動きを保つこと」の絶妙なバランスを保つ必要があるため、お薬の調整は必ず専門の主治医が慎重に判断すべき領域です。
「最近調子がいいから」「逆に効きすぎている気がするから」とご家族の判断でお薬を減らしたり増やしたりすることは絶対に避け、必ず主治医に相談してください。
診察室で医師に正確に伝わる「3つの観察メモ」
主治医が「今のお薬の量が合っているか」「調整が必要か」を判断するうえで、一番の手がかりになるのはご家庭での日常の様子です。
とはいえ、短い診察時間の中で口頭で説明しようとすると、「とにかく毎日幻視がひどいんです」としか伝えられず、医師も判断に迷ってしまうことがあります。
受診の1〜2週間前から、スマホのメモやノートに以下の「3つのポイント」を箇条書きで記録し、診察時にそのまま医師に見せる方法が効果的です。
① 出現する時間帯と持続時間
「いつ」「どのくらいの時間」見えているのかを記録します。
- (例)「毎日17時〜19時頃の夕食前後に、約30分間『知らない子どもがいる』と言う」
- (例)「夜中の2時頃に目を覚まして訴えるが、トイレに行って戻ると忘れて眠る」
② その時の照明や部屋の環境
どんな状況で引き起こされているかを書き添えます。
- (例)「寝室の電気を消して豆電球にした直後に『天井に虫がいる』と訴える」
- (例)「リビングの明るい場所では言わないが、薄暗い廊下に出ると『人が立っている』と立ち止まる」
③ ご本人の表情と生活への影響度
医師が薬を調整するかどうかを決める最大の基準は、「幻視があるかどうか」ではなく「その幻視によって本人や家族がどれだけ困っているか(生活に支障が出ているか)」です。
- 穏やかなケース:
「『あそこに犬がいるね』とニコニコして話しており、食事も睡眠もとれている」
→ この場合、副作用のリスクを避けるため、あえて薬を増やさず様子を見ることも多くあります。 - つらいケース:
「怖い顔で怯えて布団から出られず、夜中に大声を出して家族もほとんど眠れていない」「虫を払おうとしてベッドから転落しそうになった」
→ このようにご本人の苦痛や危険が大きい場合は、薬の調整や変更が検討されます。
専門機関へ相談すべきタイミングと目安

真面目で優しいご家族ほど、「私がうまく対応してあげれば落ち着くはず」「家のことは家族でなんとかしなければ」と、限界までひとりで抱え込んでしまいがちです。
しかし、レビー小体型認知症のケアは長期戦です。以下のようなサインが見られたら、「まだ我慢できる」と思わず、すぐに主治医や担当のケアマネジャー、お近くの地域包括支援センターへ連絡してください。
すぐに主治医へ相談したいサイン
- 昨日までと様子がまったく違い、急激に幻視や興奮が悪化したとき
認知症そのものの進行ではなく、便秘、脱水、発熱(風邪や尿路感染症など)、あるいは新しく始まった別のお薬の影響で、一時的な意識の混乱(専門的には「せん妄」と呼ばれます)が起きている可能性があります。
原因を取り除けば落ち着くことも多いため、早めの受診が大切です。 - 幻視への恐怖から、食事や水分を拒否するようになったとき
「ご飯に虫が入っている」などの理由で飲食ができなくなると、数日で脱水や体力低下を招きます。 - すくみ足やふらつきが強まり、実際に転倒した・転倒しそうになったとき
ケアマネジャーや地域包括支援センターを頼るタイミング
- 夜間の対応が続き、ご家族が睡眠不足で心身に限界を感じているとき
- ご本人に対して、つい怒鳴ってしまったり、手を上げそうになったりして自分が怖くなったとき
ご家族が倒れてしまっては、元も子もありません。
ケアマネジャーに相談すれば、日中のデイサービスを増やしてご本人の生活リズムを整えたり、ショートステイ(短期入所)を利用して「ご家族が一晩ぐっすり眠れる日」を作ったり、訪問看護を入れて体調や服薬の管理を看護師にサポートしてもらうことができます。
介護保険のサービスを使うことは「手抜き」ではなく、これからも穏やかな家族関係を続けるための「賢い選択」です。
レビー小体型認知症の幻視に関するよくある質問(FAQ)
ここからは、リコケアコナーズに寄せられるご家族からのご相談の中でも、特に多い疑問や細かなお悩みにお答えします。
Q1. 見えていないのに「私にも見えるよ」と話を合わせた方がいいのでしょうか?
A. 無理に「私にも見える」とウソをつく必要はありません。
ご家族が「私にもあの黒い服の人が見えるわ!」と話を合わせすぎると、ご本人は「やっぱりあそこに不審者がいるんだ!」と確信してしまい、余計に怖がってしまうことがあります。
大切なのは、見えている物の存在を肯定することではなく、「お父さんにはそう見えているんだね。それはびっくりしたね(嫌だったね)」と、ご本人の体験と感情を否定せずに受け止めることです。
そのうえで「私が確認したから大丈夫」「もうあっちへ行くように言ったから安心して」と、安心できる結末へ導いてあげてください。
Q2. 夜中に幻視で起きてしまい、家族が寝不足で限界です。どうすればいいですか?
A. まずは夜間の照明環境を見直し、主治医への相談とショートステイ等の利用を同時に進めましょう。
夜中に目が覚めたとき、豆電球の薄暗い光がつくる影が幻視を誘発しているケースが多いため、足元のセンサーライトに切り替えたり、一度部屋の電気をしっかりつけて「誰もいない明るい部屋」を確認してもらったりすると落ち着くことがあります。
また、レビー小体型認知症では、寝ている間に怖い夢を見て大声を出したり手足を動かしたりする「レム睡眠行動障害」という症状が重なっていることもあります。
睡眠環境を整えても改善しない場合は、主治医に夜間の様子を伝えてお薬の相談をするとともに、ケアマネジャーに相談してショートステイなどを利用し、まずはご家族自身の睡眠時間を確保することを最優先にしてください。
Q3. 幻視の訴えに対して、ついイライラして怒ってしまい自己嫌悪になります…。
A. 怒ってしまうのは、あなたが毎日真剣に向き合っている証拠です。60点の対応で十分だと考えてください。
頭では「否定してはいけない」とわかっていても、自分が疲れているときや忙しいときに何度も同じことを訴えられれば、イライラして強い口調になってしまうのは人間として当たり前のことです。
もし否定して言い合いになってしまったら、その場を離れてトイレや別室に行き、3分だけ深呼吸をしてみてください。
レビー小体型認知症の方は、少し時間を置いてご家族が穏やかな表情で「さっきは大きな声を出してごめんね。お茶を淹れたから飲もうか」と声をかけ直すと、気持ちを切り替えてくれることがよくあります。
毎回100点満点の神対応を目指す必要はありません。
Q4. 昨日まで落ち着いていたのに、今日になって急に幻視がひどくなったのはなぜですか?
A. 体調の変化(便秘・脱水・微熱)や、環境・薬の変化が引き金になっている可能性があります。
レビー小体型認知症はもともと「調子の良い日と悪い日の波」がある病気ですが、あまりにも急激に悪化した場合は、身体の中に何らかのSOSが隠れていることが少なくありません。
「ここ数日お通じが出ていない」「水分が摂れていない」「少し熱っぽい」「最近、内科や整形外科などで新しい薬(風邪薬や胃薬、痛み止めなどを含む)が出た」といった変化がないか確認してみてください。
思い当たることがあれば、早めに主治医へ相談することをおすすめします。
まとめ:完璧な対応を目指さず、ご家族自身の心と体を守るために
レビー小体型認知症の幻視への対応について、原因の仕組みから具体的な声かけ、お部屋の環境づくりまでお伝えしてきました。
最後に大切なポイントを振り返っておきましょう。
- 幻視はご本人にとって生々しい現実であり、脳の視覚処理の誤作動や、部屋の影・シミの見間違い(錯視)から起きている。
- 「否定しない」とは、ご本人の「怖い・不安だ」という気持ちに寄り添うこと。
一緒に払う動作をしたり、別の部屋へ移動して視界を変えたりするのが効果的。 - 夕方の薄暗がりをなくす早めの点灯や、壁掛けの洋服を片付ける・無地のカーテンや寝具にするといった環境調整で、幻視の引き金を減らすことができる。
- すくみ足による転倒に注意し、足元の動線を整理する。
お薬の調整は自己判断せず、「時間帯・照明環境・本人の表情」をメモして主治医に伝える。
【公的根拠・参考資料】
本記事は、以下の公的機関の情報および診療ガイドラインを参考に、介護現場での実践経験を踏まえて作成しています。
- 日本神経学会 監修『認知症疾患診療ガイドライン2017』(医学書院)第7章 レビー小体型認知症
- 厚生労働省「認知症施策推進基本計画」および知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン・厚生労働省ポータルサイト)
- 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にする 認知症予防とケアの情報」
ここまで読んでくださったあなたは、「どうにかして本人に穏やかに過ごしてほしい」と願い、たくさんの工夫や努力を重ねてこられたはずです。
ただ、ご家庭によって間取りも違えば、ご本人の性格やご家族の状況も千差万別です。
「記事に書いてある通りに照明を変えたり声をかけたりしてみたけれど、うちの場合はうまくいかなかった」
「誰にも言えない夜のつらさを、ちょっとだけ聞いてほしい」
——そんなふうに立ち止まってしまう夜もあると思います。
私たちリコケアコナーズでは、介護の現場を知るケアマネジャー・介護福祉士として、ご家族がひとりで悩みを抱え込まずに済むよう、公式LINEでの情報発信やご相談の窓口を開いています。
もし今、ご家族の対応で迷われていることや、誰かに少し吐き出したいお気持ちがあれば、どうぞお一人で抱え込まずに、下記の公式LINEからいつでも気軽に声をかけてくださいね。
あなたが少しでも心穏やかな夜を過ごせるよう、私たちがそばで伴走いたします。

発信者:リコケアコナーズ
菅原浩平(主任ケアマネジャー、介護福祉士)
菅原嘉奈(ケアマネジャー、介護福祉士、認知症リハビリテーション専門士)