Last Updated on 2026年8月29日 by contact@konnors.net
この記事でわかること
- 認知症でイライラや怒りっぽさ(BPSD)が起きる根本的なメカニズム
- イライラを鎮める主な薬(メマリー・抑肝散・抗精神病薬など)の特徴と使い分け
- 知っておくべき薬の副作用(過鎮静・ふらつき・誤嚥)
- 薬に頼りすぎず穏やかさを引き出す「コナーズ流」5大生活ケア&リハビリ
- 多剤服用を見直し、生活アプローチで改善した現場の実例
- 主治医やケアマネジャーに相談して適切な処方調整を受けるための伝え方
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認知症のイライラや怒りっぽさ(BPSD)が起きる根本的な原因とは?

結論からお伝えすると、認知症の方が見せるイライラや暴言、興奮といった症状は、決して「本人の性格が悪くなったから」でも「意地悪をしているから」でもありません。
脳の機能低下によって生じる不安や混乱に加え、身体の不調や環境へのストレスをうまく言葉で表現できないために起こる「SOSのサイン」です。
介護現場やご家庭で最も介護者を疲弊させるのが、物忘れなどの記憶障害(中核症状)そのものよりも、感情の爆発や介護拒否、徘徊といった「行動・心理症状(BPSD)」です。
まずは、なぜご本人が突然怒り出したり、イライラを募らせたりしてしまうのか、その背景にある3つの要因を整理しましょう。
【認知症のイライラが発生する3つの重なり】
1. 中核症状による混乱(記憶障害・見当識障害で状況が理解できない)
2. 前頭葉の機能低下(感情のブレーキが効きにくくなる)
3. 身体・環境ストレス(脱水・便秘・痛み・周囲の否定的な対応)
↓
言葉でうまく伝えられないため「イライラ・怒り・興奮(BPSD)」として表出する
1. 中核症状(記憶・見当識の低下)による強い不安と混乱
認知症になると、「今が何時で、ここがどこなのか」「目の前にいる人が誰なのか」「さっき自分が何をしていたのか」が徐々に分からなくなります。
健常な方であっても、見知らぬ場所に突然放り出され、周りから理解できない指示を出されたら強い恐怖やパニックを感じるはずです。
認知症のご本人は、常に霧の中にいるような強烈な不安の中で生きています。
その防衛本能として、周囲に対して攻撃的になったり、イライラとして現れたりするのです。
2. 前頭葉機能の低下による「感情のブレーキ不良」
大脳の前頭葉(特に前頭前野)は、喜怒哀楽の感情をコントロールし、理性的に物事を判断する「心のブレーキ」の役割を担っています。
アルツハイマー型認知症の進行や、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などの脳血管障害によって前頭葉への血流や機能が低下すると、湧き上がった感情を抑制できなくなります。
若い頃なら理性の力で我慢できていた小さな不快感や焦りが、ストレートに怒りや大声となって表に出てしまうのです。
3. 身体の不調(脱水・便秘・痛み)や環境ストレスによるSOS
認知症ケアの現場で特に見落とされがちなのが、「身体の不快感」がイライラを引き起こしているケースです。
- 水分不足(隠れ脱水):
脳の血流が低下し、意識が混濁して不穏やイライラが増大します。 - 便秘・腹部膨満感:
お腹が張って苦しいものの、それを言葉で訴えられず不機嫌になります。 - 関節痛や虫歯などの痛み:
どこが痛いのか自覚・説明できず、触れられると反射的に怒ります。 - 急かされる・否定される接し方:
「早くして」「さっきも言ったでしょ」といった周囲の言葉が自尊心を傷つけ、強い反発を生みます。
ご本人は理由もなく怒っているのではなく、「身体が苦しい」「怖い」「プライドが傷ついた」というシグナルを怒りという形で発信しているのです。
認知症のイライラ・興奮を抑える主な薬の種類と効果

イライラや興奮などのBPSDを抑えるための薬物療法には、大きく分けて「認知症の進行抑制薬(メマリーなど)」「漢方薬(抑肝散など)」「向精神薬(抗精神病薬・抗不安薬など)」の3つのアプローチがあります。
症状の強さや原因、ご本人の体力に合わせて適切な薬を選択することが大切です。
医療機関で処方される主な薬剤の特徴と、期待される効果について詳しく解説します。
1. メマリー(一般名:メマンチン):過剰な興奮を鎮める守りの薬
中等度から高度のアルツハイマー型認知症に対して処方される抗認知症薬が『メマリー』です。
脳を活性化させて記憶力を高める「アリセプト(ドネペジル)」とは対照的に、メマリーは「脳の神経細胞を過剰な興奮から守る」という独自のアプローチを持っています。
メマリーの仕組みとイライラへの効果
脳内で神経伝達物質「グルタミン酸」が過剰に放出されると、神経細胞にカルシウムイオンが過剰に流入し、神経が興奮状態に陥って細胞が死滅しやすくなります。
これがイライラや易怒性(怒りっぽさ)の一因となります。
メマリーは、グルタミン酸が結合する受容体(NMDA受容体)に適度にフタをすることで、神経細胞の過剰な興奮をブロックし、穏やかな精神状態を保つサポートをします。
アリセプト(ドネペジル)との違いと切り替えの意義
初期の認知症でよく処方されるアリセプトは、意欲を引き出す一方で、人によっては「怒りっぽくなった」「攻撃的な言動が増えた」という興奮系の副作用が出ることがあります。
そのため、BPSDの状況に応じて医師が検討することがある薬です。
怒りっぽくなる理由はもちろん薬だけが原因ではありませんが、普段からその状況をメモしておき、医師や薬剤師に相談してみてください。
それによって、医師が処方を検討しやすくなります。
※必ずしも、薬の切り替えが必要になるとは限りません。
2. 漢方薬(抑肝散など):神経のたかぶりをマイルドに和らげる
「西洋薬の強い副作用が心配」という場合に第一選択として広く使われているのが漢方薬です。
特に『抑肝散(よくかんさん)』や『抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)』は、認知症ガイドラインでもBPSDの改善効果が認められています。
| 漢方薬の名称 | 主な特徴 |
| 抑肝散(よくかんさん) | 神経の興奮、イライラ、怒りっぽさ、幻覚、夜間の不眠を鎮める。 |
| 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ) | 抑肝散に胃腸を整える生薬(陳皮・半夏)を加えたもの。 |
| 釣藤散(ちょうとうさん) | 高血圧傾向で朝方の頭痛やめまい、イライラを軽減する。 脳血流の改善も期待される。 |
| 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) | 体力があり、顔が赤くのぼせてカッとなりやすいタイプの興奮・不穏を鎮める。 |
抑肝散に含まれる生薬(釣藤鈎や柴胡など)は、セロトニン神経系やグルタミン酸受容体に作用し、自律神経の乱れや高ぶった感情を落ち着かせる効果が期待されます。
ただし、実際の薬の選択・変更は医師が医学的根拠をもって判断しますので、「主な特徴」にあるような症状に対して、必ず処方されるものではありません。
3. 抗精神病薬:幻覚・妄想・暴力ある方に多い処方
暴力、夜間の興奮、「誰かが部屋に入ってきた」「財布を盗まれた」といった幻覚・物取られ妄想に対しては、非定型抗精神病薬が少量処方されることがあります。
- リスペリドン(リスパダール):
強い興奮や攻撃性を鎮める作用がある。 - オランザピン(ジプレキサ):
鎮静作用が強く、不穏や不眠を伴う興奮に用いられる(※糖尿病患者には禁忌)。 - クエチアピン(セロクエル):
作用がマイルドで錐体外路症状が出にくい(※糖尿病患者には禁忌)。 - アリピプラゾール(エビリファイ):
ドーパミンを適切に調整し、過度な鎮静を起こしにくい。
抗精神病薬は効果的であったとしても、後述する副作用のリスクがあるため、原則として「最小限の投与量」「短期間での使用」が基本とされています。
これもまた、医師が慎重に処方を検討するものなので、処方された場合は、用法・用量を厳守するようにしましょう。
4. 抗不安薬・睡眠薬・抗うつ薬(SSRI/SNRI)
- 抗不安薬(タンドスピロンなど):
焦燥感や強い不安を軽減します。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は高齢者にふらつきを起こしやすいため、慎重な選択が求められます。 - オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント・レンボレキサント):
自然な眠気を促し、夜間の不眠からくる日中のイライラを軽減します。 - 抗うつ薬(SSRIなど):
認知症に伴う抑うつ気分、強い不安、常同行動(同じ行動を繰り返す)の緩和に用いられることがあります。
【一覧表】認知症のイライラに使われる主な薬剤の比較
各薬剤の「期待される効果」「注意すべき副作用」「適した状態」を比較表にまとめました。
| 薬剤分類 | 代表的な薬剤名 | 主な作用とメリット | 注意すべき副作用・リスク | こんな状態のときに検討 |
| NMDA受容体拮抗薬 | メマリー (メマンチン) | 脳の過剰興奮をブロック、脳保護作用、穏やかさを取り戻す | めまい、ふらつき、傾眠(日中の眠気) | 中等度以上の認知症で、攻撃性や易怒性が目立つとき |
| 漢方薬 | 抑肝散 抑肝散加陳皮半夏 | 自律神経を整える、マイルドな鎮静、自然な落ち着き | 偽アルドステロン症(低カリウム血症・むくみ・筋力低下)、胃腸障害 | 夕方の不穏(黄昏症候群)、軽度〜中等度のイライラ |
| 非定型抗精神病薬 | リスペリドン クエチアピン オランザピン | 激しい興奮・妄想・幻覚・暴力を軽減する | 過鎮静(寝たきり化)、歩行障害、嚥下障害、誤嚥性肺炎 | 在宅生活の維持が困難なほどの激しい興奮・暴力・妄想 |
| 睡眠薬(オレキシン系) | デエビゴ ベルソムラ | 覚醒物質をブロックし、自然な睡眠リズムを回復 | 持ち越しによるふらつき、悪夢、頭痛 | 昼夜逆転や夜間不眠が原因で日中に不穏になる場合 |
※薬の効果には個人差があります。
用法・用量を厳守し、効果について随時、医師や薬剤師に報告、相談することをおすすめします。
知っておくべき薬の副作用と「過鎮静(効きすぎ)」のリスク

認知症のイライラを薬で抑えようとする際、最も警戒しなければならないのは「薬の効きすぎによる過鎮静」です。
怒りを鎮めることだけを目的に薬を増やした結果、日中もぼーっとして寝たきりになり、急速に身体機能が低下してしまうケースがあります。
薬物療法を安全に進めるために、ご家族が必ず知っておきたい4つの副作用とリスクを解説します。
【薬の効きすぎによって予想される悪循環】
イライラを抑えるために薬を増量
↓
日中ぼーっとして活動量低下(過鎮静)
↓
足腰の筋力低下・ふらつき・転倒骨折
↓
嚥下機能低下による誤嚥性肺炎・寝たきり化
1. ぼーっとして寝てばかりになる「過鎮静」
抗精神病薬や鎮静系の睡眠薬・抗不安薬が強すぎると、日中もずっとウトウトして呼びかけに対する反応が鈍くなります。
一見すると「穏やかになった」ように見えるかもしれませんが、これは症状が改善したのではなく、薬の力で脳の活動全体を停止させている状態です。
表情が失われ(仮面様顔貌)、意欲が低下し、認知症そのものが悪化したかのような状態に陥る可能性があります。
2. 錐体外路症状(手の震え・すくみ足・小刻み歩行)と転倒リスク
特に抗精神病薬の服用によって、脳内のドーパミン伝達が過剰に抑えられると、パーキンソン病に似た症状(錐体外路症状)が現れることがあります。
- 手足が小刻みに震える
- 筋肉がこわばって動作がぎこちなくなる
- 歩くときに足が前に出なくなる(すくみ足、小刻み歩行)
- バランスを崩しやすくなる
これらの症状が出ると、室内での転倒事故や大腿骨骨折のリスクが跳ね上がり、車椅子生活や寝たきりの引き金になってしまいます。
3. 嚥下機能の低下(飲み込みづらさ・誤嚥性肺炎)
鎮静系の薬剤は、喉や舌の筋肉の動きを鈍らせ、食べ物や唾液を飲み込む「嚥下(えんげ)反射」や、気管に入ったものを吐き出す「咳反射」を低下させます。
その結果、食事中にむせやすくなったり、睡眠中に唾液が肺に入り込んで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を発症したりする危険性が高まります。
高齢者の肺炎は命に関わる重大なリスクです。
4. 漢方薬でも起きる副作用「偽アルドステロン症」
「漢方薬なら自然由来だから副作用がない」というのは誤解です。
抑肝散などの多くの漢方薬に含まれる生薬「甘草(カンゾウ)」を長期・大量に服用すると、体内のカリウムが尿中に過剰排出され、ナトリウムと水分が体に溜まる『偽アルドステロン症』を引き起こすことがあります。
- 手足に力が入らない、脱力感がある
- 手足がしびれる、筋肉痛のような痛みがある
- 顔や手足がひどくむくむ
- 血圧が急激に上昇する
定期的な血液検査で血清カリウム値を測定し、異常がないか確認することが重要です。
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「薬を飲み始めてから、以前よりも怒りっぽくなったり、急に元気がなくなったりした…」と感じる場合、それは病気の進行ではなく薬の副作用(薬剤性認知機能低下や過鎮静)が原因かもしれません。
薬による悪化のサインや具体的な見分け方、減薬・見直しの進め方については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
👉 【関連記事】認知症の薬で症状が悪化する?穏やかさを取り戻す見直し法
薬だけに頼らず穏やかさを取り戻す「コナーズ流」5大生活ケア&リハビリ

薬はあくまで一時的に感情の高ぶりを落ち着かせるための「補助的な杖」のようなものです。
根本からイライラや興奮を解消し、ご本人が自分らしく穏やかに過ごすためには、生活環境を整え、脳血流と自律神経を活性化させる「非薬物アプローチ」を併用していくことが重要です。
私たち「リコケアコナーズ」が介護現場やリハビリの実践で重視している、再現性の高い5つの独自アプローチをご紹介します。
アプローチ1:1日1,500mlをめざす「水分ケア」で脳の巡りを整える
認知症のイライラ・不穏対策において、最初に見直したいのが「水分摂取量」です。
なぜ脱水がイライラを引き起こすのか?
高齢者は口渇中枢が鈍くなり、喉の渇きを感じにくくなっています。
体重の1〜2%の水分が失われる軽度脱水だけでも、血液の粘度が高まって脳への血流・酸素供給が滞り、「意識の混濁」「幻覚」「強い焦燥感・イライラ」を誘発します。
夕方に不穏になる「夕暮れ症候群」の多くも、日中の水分不足が大きな原因となっています。
1日1,500mlを無理なく達成する工夫
「お茶を飲んでください」と一度に大量の水分を勧めても拒絶されがちです。以下のように時間を分けて自然に補給しましょう。
- 起床時・就寝前
コップ1杯の白湯(各150ml=計300ml) - 毎食時:
お茶やお味噌汁・スープ(各200ml×3回=計600ml) - 10時・15時のお茶の時間:
好きなお茶やゼリー、果物(各200ml×2回=計400ml) - 入浴前後:
水分補給(各100ml×2回=計200ml) - 合計:約1,500ml
お茶を嫌がる場合は、とろみつきジュース、レモン水、ゼリー、水分の多い果物(スイカ・梨など)を活用するのも効果的です。
※ただし、心臓、腎臓の病気や嚥下障害などにより、医師から水分制限等を受けている場合は、自己判断で行動せず、必ず医師や看護師に相談するようにしてください。
また、いきなり大量に飲もうとすると、健康上の問題が起こる可能性があるので、注意してください。
💡 あわせて読みたい:
「水分を勧めても拒否される」「トイレが近くなるのを嫌がって飲んでくれない」とお困りの方は少なくありません。
認知症の方が無理なくスムーズに水分を摂取できる具体的な工夫や、水分補給によって不穏・妄想が劇的に改善した現場ノウハウは、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
👉 【関連記事】認知症は水分ケアで変わる?イライラ・不穏を落ち着かせるコナーズ流実践法
アプローチ2:便秘解消と腸内環境の改善(腸脳相関へのアプローチ)
「便秘が続くと不機嫌になり、排便があると嘘のように穏やかになる」というのは、介護現場ではよくある現象です。
腸は「第2の脳」と呼ばれ、脳と自律神経・ホルモンを介して密接に繋がっています(腸脳相関)。
心を落ち着かせる神経伝達物質「セロトニン」の前駆物質の約9割は腸内で作られています。
便秘によって腸内環境が悪化するとセロトニンが正常に分泌されず、自律神経が乱れてイライラしやすくなるのです。
- 水溶性食物繊維の摂取:
海藻類、オクラ、納豆、大麦などを食事に取り入れる。 - 発酵食品の活用:
ヨーグルトや味噌、甘酒などで善玉菌を補う。 - 「の」の字腹部マッサージ:
おへそを中心に時計回りに優しくマッサージし、腸の蠕動運動を促す。
アプローチ3:前頭葉と血流を刺激する「卓上アプローチ&運動」
脳の感情抑制中枢である「前頭葉」の血流を高めることで、感情のコントロール力を底上げします。
コナーズ流・卓上アプローチ
テーブルの上で座ったまま行える簡単な指先運動や脳トレは、前頭葉と頭頂葉の血流を活性化させます。
- 指折り体操・後出しジャンケン:
指先を細かく動かすことで脳の運動野を刺激。 - 数字・色のマッチングパズル:
達成感を感じられる難易度で前頭前野を刺激。 - 懐かしい音楽の合唱・手拍子:
側頭葉(記憶・感情)を活性化させ、リラックスホルモンを分泌。
下肢の血流改善運動
ふくらはぎは「第2の心臓」です。
座った状態での「かかと上げ下げ運動(カーフレイズ)」や、軽い散歩を行うことで、下半身に滞った血液を心臓や脳へと力強く送り返すことができます。
アプローチ4:光環境と睡眠リズムの再構築(サーカディアンリズム)
体内時計(サーカディアンリズム)の乱れは、夜間の不眠と昼間のイライラを直結させます。
- 朝の太陽光を浴びる:
起床後すぐにカーテンを開け、15〜30分程度朝日を浴びることで、セロトニンが分泌され、14〜16時間後のメラトニン(睡眠ホルモン)生成を促します。 - 夕方の照明を工夫する:
夕暮れ時は部屋が薄暗くなり、影が不気味に見えて恐怖心や幻覚を呼び起こしやすくなります。
早めに部屋全体を明るい暖色系の照明で照らし、視覚的な不安を取り除きます。
アプローチ5:否定しない・安心感を与える「寄り添いのコミュニケーション」
どれほど良い薬や食事を取り入れても、介護者との関係性がトゲトゲしていればイライラは収まりません。
| NGな対応例(イライラを悪化させる) | コナーズ流・OKな対応例(安心感を与える) |
| 間違いを頭ごなしに否定する 「さっきも言ったでしょ!」「違いますよ!」 | 一度共感してから受け止める 「そう思われたんですね」「不安でしたね」 |
| できないことを無理にやらせる・急かす 「早く歩いて!」「早く食べて!」 | ご本人のペースに合わせ、選択肢を絞る 「ゆっくりで大丈夫ですよ」「お茶とコーヒー、どちらにしますか?」 |
| 正面から説得・議論しようとする 「そんな事実はありません、勘違いです」 | 場面転換(アテンション・シフト)を使う 「わかりました。その前に、美味しいお茶が入ったので一緒に飲みませんか?」 |
物忘れがひどく、言われたことを忘れてしまったとしても、「言われたことで発生した感情」は残ると言われています。
ご本人の感情を否定せず、「あなたの味方である」という安心感を言葉と態度で伝え続けることが、最大の精神安定剤になります。
【実例】薬を減らしながら穏やかさを取り戻した改善事例
現場で実際にあった、薬の見直しと生活アプローチによって劇的な改善を遂げた3つの事例をご紹介します。
※以下のいずれも、同じ効果を保証するものではありません。
事例1:アリセプト服用後に暴言・介護拒否が激化した80代男性
- 【ご相談時の状況】:
アルツハイマー型認知症と診断されアリセプトを最大量(10mg)服用中。
次第に怒りっぽくなり、入浴介助や着替えに対して大声で怒鳴り、手を上げるようになった。
ご家族は「病気が進んで凶暴になった」と絶望し、施設入所を検討。 - 【コナーズ流アプローチ】:
- 専門医と連携し、アリセプトの興奮作用を疑って段階的に減量し、マイルドなメマリーへ処方変更。
- 日中の水分摂取量が800ml未満だったため、好物のほうじ茶とゼリーで1日1,400mlまで引き上げ。
- 昔好きだった将棋を使った卓上アプローチを取り入れ、自尊心を回復。
- 【結果】:
処方変更と水分補給から3週間後、急に怒鳴る行動がピタリと消失。
「ありがとう」と穏やかに笑顔で介護を受け入れてくれるようになり、在宅生活を継続できるようになりました。
事例2:夕方になると「家に帰る」とパニックになっていた70代女性
- 【ご相談時の状況】:
夕方16時を過ぎると「子供たちのご飯を作らなきゃ」「家に帰らせて!」と荷物をまとめ、外に出ようとして制止する家族に激怒する「夕暮れ症候群」に悩まされていた。 - 【コナーズ流アプローチ】:
- かかりつけ医に相談し、夕方に効くよう漢方薬「抑肝散加陳皮半夏」を処方。
- 15時半から部屋のカーテンを閉めて室内を明るくし、夕暮れの薄暗がりを感じさせない環境を構築。
- 16時前に「夕飯の準備を手伝っていただけますか?」と野菜の皮むきや洗濯物たたみの役割を依頼。
- 【結果】:
「人の役に立っている」という安心感と光環境の調整、漢方の効果が合わさり、夕方のパニックが消失。穏やかに夕食を囲めるようになりました。
事例3:便秘と睡眠薬の持ち越しで一日中不機嫌だった80代女性
- 【ご相談時の状況】:
強い睡眠薬を服用しており、日中は午前中ずっとぼーっとしている一方、午後になると排便が出ない苦しさからイライラし、車椅子から立ち上がろうとして転倒を繰り返していた。 - 【コナーズ流アプローチ】:
- 睡眠薬をふらつきの少ないオレキシン受容体拮抗薬へ見直し。
- 朝一番の白湯と食物繊維豊富な食事、毎日の腹部マッサージで自然排便のリズムを整える。
- 午前中に太陽光を浴びながら足踏み体操を実施。
- 【結果】:
毎朝の排便がスムーズになり、日中の眠気とイライラが解消。
足元のふらつきもなくなり、自力で元気に歩行器を使って散歩ができるまで回復しました。
主治医・ケアマネジャーと上手に連携して薬を調整してもらうコツ

医師は診察室でのごく短い時間しかご本人の様子を見ることができません。
そのため、ご家族が「家庭での様子」を正確かつ具体的に伝えることが、最適な処方調整(減薬・変更)を引き出す鍵になります。
医師やケアマネジャーに相談する際は、以下の3つのポイントを意識してください。
1. 「いつ・どんな状況で・どうなるか」をメモ(生活日誌)にして持参する
「最近イライラがひどいんです」とだけ伝えると、安易に強い鎮静薬が追加されてしまう恐れがあります。
例:
- 時間帯:
「毎日夕方16時頃になると急にソワソワし始める」 - きっかけ:
「入浴を促したときや、テレビの音が大きいときに怒り出す」 - 具体的な行動:
「大声を出す」「物を投げる」「暴言を吐く」 - 食事・水分・排便の記録:
「水分は1日約1,000ml、便は3日間出ていない」
わかる範囲で、客観的なデータをメモして見せることで、医師も「薬の副作用なのか、脱水や便秘のせいなのか、環境要因なのか」を正確に判断しやすくなります。
2. 「効きすぎ(過鎮静)」のサインを見逃さず伝える
薬を飲み始めてから以下のような変化が見られた場合は、すぐに主治医に報告してください。
- 日中ずっと眠そうにしていて声をかけても反応が薄い
- ご飯を食べるスピードが極端に遅くなった、口の中に食べ物をため込む
- 歩くときに足を引きずる、すり足になった
- 表情が能面のようになって笑顔が消えた
3. 決して自己判断で急に服薬を中止・増減しない
「副作用が怖いから」といって、ご家族の独断で急に薬の服用をやめてしまうと、抑えられていた症状が一気に吹き出す「反跳現象(リバウンド)」や、激しい離脱症状を起こす危険があります。
減薬や中止は、必ず主治医の管理のもとで少しずつ段階的に進めることが鉄則です。
認知症のイライラ・薬に関するよくある質問(FAQ)
Q1. イライラを抑える薬を飲むと、認知症自体が早く進行してしまいますか?
A. 適切な薬を適量服用している限り、薬そのものが認知症を直接進行させるわけではありません。
しかし、抗精神病薬や強い鎮静薬の効きすぎによって日中寝たきりになり、会話や活動量が減ってしまうと、脳への刺激が失われて二次的に認知機能が急速に低下することがあります。
日中の覚醒レベルや活動性を保てる「必要最小限の量」に調整してもらうことが重要です。
決して自己判断で調整せず、医師に相談してください。
Q2. 漢方薬(抑肝散)はドラッグストアの市販薬でも効果は同じですか?
A. 市販されている抑肝散も医療用と同じ生薬成分を含んでいますが、市販薬は安全性を考慮して有効成分の配合量が医療用の半分〜2/3程度に抑えられている製品もあります。
また、認知症の症状に対する適切な診断や他の薬との飲み合わせの確認、定期的な血液検査(低カリウム血症の予防)を受けるためにも、まずは専門医やもの忘れ外来などを受診して処方してもらうことを強く推奨します。
Q3. 薬を嫌がって飲んでくれない(服薬拒否)ときはどうすればいいですか?
A. 認知症の方にとって「薬を無理やり飲まされること」自体が強い不快感や被害妄想の引き金になります。
- 錠剤が飲みにくい場合は、口の中でサッと溶ける「OD錠(口腔内崩壊錠)」や「ゼリー状のオブラート」「貼り薬(貼付剤)」への変更を医師に相談する。
- 「体に良いビタミンのお薬ですよ」「お腹の調子を整えるお薬ですよ」など、ご本人が納得しやすい声かけを工夫する。
- 好きなヨーグルトやプリンに混ぜる方法もありますが、薬によっては苦味が増したり効果が変わるものもあるため、事前に薬剤師に確認しましょう。
Q4. 薬を飲ませてもイライラがまったく収まりません。病院を変えるべきですか?
A. 薬が効かない場合、「薬の種類や用量が合っていない」だけでなく、「脱水・便秘・身体の痛み・周囲の接し方などの根本原因が解決されていない」可能性があります。
まずは水分量や排便状況、接し方を見直してみてください。
それでも改善せず、主治医がご家族の訴えに耳を傾けてくれない場合や、薬を増やす一方である場合は、認知症専門医(もの忘れ外来や精神科・老年心療内科)へのセカンドオピニオンを検討するのも有効な選択肢です。
まとめ:生活ケアとリハビリで穏やかな暮らしを取り戻そう
認知症のイライラや怒りっぽさは、ご本人にとっても「どうしていいか分からない苦しみ」の表れです。
- 薬は感情の爆発を一時的に和らげる「守りの杖」として適切に活用する
- 過鎮静やふらつきなどの副作用に注意し、定期的に医師と状態を共有する
- 水分・便秘・運動・光環境・寄り添いのコミュニケーションといった「生活アプローチ」を同時に整える
この両輪を回していくことで、薬の量を最小限に抑えながら、ご本人本来の優しい笑顔とご家庭の穏やかな時間を取り戻せる可能性があります。
決して一人で抱え込まず、専門職や地域のサポートを頼りながら、一歩ずつできるケアから始めていきましょう。
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この記事の執筆・監修
リコケアコナーズ運営チーム
- 菅原 浩平(ケアマネジャー/介護福祉士)
介護現場の最前線で多くの認知症高齢者とそのご家族を支援。
在宅生活を無理なく継続するためのケアマネジメントと生活環境設計を専門とする。 - 菅原 嘉奈(ケアマネジャー/介護福祉士/認知症リハビリテーション専門士)
認知症リハビリテーションの専門的見地から、脳血流や内臓機能、卓上アプローチなどを組み合わせた「コナーズ流」の非薬物ケアを提唱。
ご本人の尊厳とご家族の心のゆとりを両立するケアの実践に注力している。