認知症
改善資料
2026.07.22

認知症の帰宅願望「家に帰りたい」の正解は?否定しない3つの声掛け

【帰宅願望】「家に帰りたい」がピタリと止まる?否定しない声掛けと3つの神対応

この記事でわかること

  • 「家に帰る」と譲らない本当の理由(自分の家のはずなのに「帰りたい」と言う、脳の混乱と不安のメカニズム)
  • 夕方になるとソワソワしだす「夕暮れ症候群」の原因(疲れや視覚のトラブル、一日のバイオリズムとの関係)
  • 逆効果になるNG対応(無理に説得する・嘘をつく・閉じ込めることが、不安や徘徊を悪化させる理由)
  • プロが実践する「コナーズ流」3つの安心サポート(脳の覚醒を促すケア、不安を「役割」に変える魔法の声かけ、環境設定)

夕方のソワソワや不安を、心穏やかな「安心」に変えるために

目の前の家を「自分の家ではない」と感じてしまう背景には、脳の機能低下による強い不安が隠れています。

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はじめに

夕方になり、そろそろ夕食の準備を…という忙しい時間帯に限って始まる、「家に帰る」という言葉。

「ここはあなたの家ですよ」
「もう外は暗いからダメ」

そう言い聞かせても、「いいえ、帰ります」と聞き入れられず、押し問答になって疲弊してしまう…。
そんな経験はありませんか?

実はこれ、専門的には「夕暮れ症候群」や「帰宅願望」と呼ばれるものですが、対応を少し変えるだけで、驚くほどスッと落ち着くことがあります。

今回は、気仙沼で認知症ケアに携わる専門家の視点から、薬に頼らず言葉かけだけで落ち着いてもらう「会話のテクニック」と、その背景にある「脳の仕組み」についてお伝えします。

なぜ、自宅にいるのに「帰りたい」と言うの?

なぜ、自宅にいるのに「帰りたい」と言うのか

まず、一番の疑問はここだと思います。

「いま自宅にいるのに、どうして『家に帰る』と言うの?」

実は、認知症の方が探している「家」とは、物理的な建物のことではありません。
彼らが本当に求めているのは、以下の2つです。

  1. 安心できる居場所(不安の解消)
  2. 自分の役割がある場所(過去の記憶の中の自分)

認知症によって記憶や認識力が低下すると、今の環境が「自分の知らない場所」に見えてしまい、猛烈な不安に襲われます。
「ここには私の居場所がない、だから(記憶の中にある安心できる)家に帰らなきゃ」という防衛本能が働いているのです。

つまり、「帰りたい」という言葉は、「今、すごく不安です」というSOSなのです。

この不安を取り除くことこそが、脳のストレスを減らし、認知症改善への第一歩となります。

「帰りたい」と言われた時の3つの神対応ステップ

「帰りたい」と言われた時の3つの神対応ステップ

では、具体的にどう声をかければ良いのでしょうか?

ポイントは「否定せず、納得してもらい、役割を作る」です。

STEP 1:まずは「受容」する(否定しない)

一番やってはいけないのが正論での説得です。

「ここは家でしょ!」と言われると、ご本人は「嘘をつかれて閉じ込められている」と感じ、余計に興奮してしまいます。

まずは、その気持ちを受け止めましょう。

  • ×「何言ってるの、ここが家でしょ」
  • ◎「ああ、お家に帰りたいんだね」

「あなたの気持ちはわかっていますよ」と示すだけで、脳の興奮は少し収まります。

STEP 2:嘘も方便で「提案」する

気持ちを受け止めたら、次は「今は帰れないもっともらしい理由」と「代替案」を提示します。
これを専門的には「あえて合わせるケア」と呼びます。

  • 「バスがもう終わってしまったので、今日はここに泊まってって」
  • 「お茶でも飲んでからにしよう」
  • 「タクシーを呼んでたから、休んで待っててね」

真正面から止めるのではなく、「それなら仕方ないな」と納得できる理由を作り、意識を「帰宅」から「目の前のこと(お茶や食事)」へ逸らします。

例えば、帰宅願望を訴える女性の場合、「そろそろ夫が帰ってくるから夕飯のお仕度しなくちゃ」と考えていることが多いです。

「お仕度はお嫁さんがしてくれましたよ」と、別の家族が代わりにやってくれたと伝えると、「あらそう?」と返し、再びお茶飲みの誘いに乗ってくれました。


気分転換にドライブに連れ出したり、どうしても興奮が収まらないため受診させたいけれど車がない…という場合は、プロの力を借りましょう。

気仙沼の介護タクシー事情についてまとめています。
【気仙沼】介護タクシー料金と賢い通院術|ケアマネが教える本音

STEP 3:「役割」を提供して、居場所を作る

ここが最も重要です。 ただ引き止めるだけでなく、「あなたにはここに居てほしい理由がある」と伝えると、劇的に落ち着くことがあります。

例えば、私の活動拠点であるここ気仙沼では、元漁師さんや海に関わる仕事をしていた方が多くいらっしゃいます。
ある男性が「帰る!」と玄関に向かわれた際、とっさにこうお願いしました。

「〇〇さん、実はこのロープの結び方がわからなくて困ってるんです。師匠、ちょっと教えてもらえませんか?」

すると、男性の顔つきがパッと変わり、「しょうがねぇな、貸してみろ」と鮮やかな手つきでロープを結び始めました。
作業を終えた頃には、「帰る」と言っていたことはすっかり忘れ、満足そうな顔でお茶を飲んでいました。

「頼りにされる」ことは、脳にとって最高の栄養です。
これは承認欲求とも言えます。

洗濯物をたたむ、食器を拭く、なんでも構いません。
「手伝って」とお願いすることで、そこは「知らない場所」から「自分が活躍できる場所」に変わるのです。

重要なのは、本人のバックグラウンドを把握すること。

認知症の種類によっては、先ほどの漁師の方のように、昔の仕事を思い出し、「早く仕事を済ませないと…」と思い立って動き出すこともよくあることです。

専業主婦だった方も、「家に帰って支度しないと」とそわそわすることがあります。
支度を手伝ってもらったり、「今日のところは私が先に済ませておいたよ」など伝えることで、そわそわが落ち着くことも少なくありません。

それでも外に出てしまった時の「備え」はしていますか?

それでも外に出てしまった時の「備え」はしていますか?

会話で落ち着いてくれればベストですが、どうしても止められない場合や、目を離した隙に外に出てしまうこともあります。

「認知症改善」を目指す上でも、ご家族が「もしもの時も大丈夫」という心の余裕を持つことが大切です。

以前の記事で、気仙沼市の「認知症高齢者等SOSネットワーク」や、GPSなどの見守り対策について詳しくまとめています。

まだ登録されていない方、不安がある方は、ぜひ合わせてご覧ください。

▼あわせて読みたい 【気仙沼】親の徘徊対策!SOSネットワーク登録と家族の事前の備え

【Q&A】よくあるご質問

読者の方からよくいただく質問にお答えします。

Q1. 今まさに自分の家にいるのに「家に帰る」と言うのはなぜですか?

A1. 認知症による記憶力や見当識(時間や場所の認識力)の低下により、ご本人にとって「今いる場所」が自分の家だと認識できなくなっているためです。

また、単に「建物としての家」に戻りたいのではなく、ご本人の心が不安に包まれており、「かつて自分が一番安心できて、役割があった場所(若い頃の実家や新婚当時の家など)」に戻りたいというサインでもあります。

Q2. 「ここがあなたの家でしょ!」と説得しても怒り出してしまいます。どう対応すれば良いですか?

A2. 正論での説得は逆効果になります。

ご本人にとっては本当に「ここは自分の家ではない」と感じているため、否定されると「だまされているのではないか」と強い恐怖や不信感を抱いてしまいます。

まずは「家に帰りたいのね」と気持ちに共感し、「お茶を一杯飲んでから行きましょう」「外が暗いので明日送りしますね」など、まずは安心感を与えてから、他のこと(好きなテレビや昔の話など)に意識をそらす工夫が効果的です。

Q3. なぜ夕方になると、急にソワソワして「帰る」と言い出すのでしょうか?

A3. これは「夕暮れ症候群」とも呼ばれる現象です。

一日を過ごした疲れが夕方にどっと出ることや、日が沈んで部屋が薄暗くなることで視覚的に不安が増すこと、かつて「夕方は夕飯の支度や仕事の退勤で動いていた時間」という昔の記憶や習慣が呼び起こされることなどが原因です。

夕方になる前に部屋を明るくしたり、軽くおやつを食べて脳に栄養を補給したりする対策が有効です。

Q4. 帰宅願望やそれに伴う徘徊の症状は、認知症リハビリで落ち着かせることは可能ですか?

A4. はい、十分に可能です。

これらの症状は脳の混乱や不安が引き起こすため、単に引き留めるだけでなく、脳の血流を促して覚醒水準を上げたり、日中に心地よい刺激(感覚統合のアプローチなど)を与えて脳のストレスを軽減させることが重要です。

「リコケアコナーズ」では、ご本人の残された機能を刺激し、不安を和らげる環境設定やアプローチを行うことで、症状の安定や改善を目指すことができます。


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