はじめに

多くの認知症患者さんと関わってきた中で、「認知症は治らない」と諦めてしまう方や、薬の効果に疑問を感じている方々を多く見てきました。

確かに、かつては「進行を少し遅らせる」ことしかできませんでした。

しかし、医療は進化しています。2023年から2024年にかけて登場した新しいタイプの治療薬により、認知症治療は「症状を緩和する時代」から「病気の進行そのものを抑える時代」へと大きな転換期を迎えています。

今回は、従来の薬から最新の「疾患修飾薬(レカネマブ・ドナネマブ)」まで、薬の効果を最大限に引き出す方法と、薬だけに頼らないケアの重要性について、最新の知見を交えて解説します。


認知症の薬物療法:基礎知識

認知症薬の基礎知識

認知症の種類とアルツハイマー型認知症

認知症には、アルツハイマー型、血管性、レビー小体型など様々な種類がありますが、全体の半分以上を占めるのがアルツハイマー型認知症です。

脳内に「アミロイドβ」と「タウタンパク質」というゴミが数十年前から蓄積し、神経細胞を破壊することで発症します。
40〜50代で発症する若年性もありますが、高齢になるほどリスクは高まります。

※体感としてレビー小体型が多いと感じる医療者もいますが、現在の新薬開発の主戦場はアルツハイマー型なので、今回は「アルツハイマー型が最も多い」を前提にお話しします。


認知症の薬の種類と効果

現在、認知症の薬は大きく「症状改善薬(従来薬)」と「疾患修飾薬(新薬)」の2つに分類されます。

1. 症状改善薬(従来の薬)

低下した神経伝達物質を補い、一時的に脳の働きを活発にする薬です。
根本的な進行は止められませんが、元気な状態を長く保つために使われます。

  • コリンエステラーゼ阻害薬(商品名:アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ/リバスタッチ)
    • 作用: アセチルコリンの分解を防ぎ、神経伝達を助けます。
    • 効果: 記憶力や意欲の低下を改善し、進行を緩やかにします。軽度〜高度まで幅広く使われます。
  • NMDA受容体拮抗薬(商品名:メマリー)
    • 作用: グルタミン酸による神経の過剰興奮を抑え、神経細胞を保護します。
    • 効果: 中等度〜高度の進行抑制に加え、**BPSD(興奮や怒りっぽさ)**を鎮める効果が期待できます。

2. 疾患修飾薬(最新の抗アミロイドβ抗体薬)

脳内に蓄積した原因物質「アミロイドβ」を直接除去し、病気の進行そのものを抑制する画期的な薬です。早期アルツハイマー病(MCI〜軽度認知症)のみが対象です。

  • レカネマブ(商品名:レケンビ)
    • 2023年12月発売。2週間に1回の点滴投与。
    • アミロイドβを除去し、認知機能の低下を27%抑制したというデータがあります。
  • ドナネマブ(商品名:ケサンラ)
    • 2024年11月発売(9月承認)。 4週間に1回の点滴投与。
    • アミロイドβの除去が確認されれば、投与を完了(終了)できる点が大きな特徴です。
認知症薬の種類
【アセチルコリンエステラーゼ阻害薬】
アリセプト
レミニール
イクセロンパッチ
リバスタッチ
【NMDA受容体拮抗薬】
メマリー

認知症薬の効果を最大限に引き出すポイント

薬はただ飲めば良いわけではありません。
特に認知症治療では、管理が難しいため周囲のサポートが不可欠です。

服用ルールと管理

  • 飲み忘れ防止: カレンダーや服薬ボックスを活用しましょう。
  • 形状の変更: 錠剤が飲みにくい場合、ゼリー状や貼り薬(パッチ剤)への変更が可能です。勝手に砕くと効果が変わる薬もあるため、必ず医師・薬剤師に相談してください。

副作用への注意(特に重要)

薬には副作用のリスクがあります。
「認知症が進んだ」と思ったら、実は副作用だったというケースも少なくありません。

  • 従来薬の副作用:
    • 吐き気、下痢、食欲不振(消化器症状が多い)。
    • 興奮、不眠、徘徊: 逆に活発になりすぎて症状が悪化したように見えることがあります。
  • 新薬(レカネマブ・ドナネマブ)の副作用「ARIA」:
    • ARIA(アリア)とは、脳のむくみ(ARIA-E)や微小な出血(ARIA-H)のことです。
    • 自覚症状がないことが多いですが、頭痛やめまいが起きることもあります。定期的なMRI検査が必須となります。

注意: 薬を飲んでから急に様子が変わった(怒りっぽくなった、ぐったりしている等)場合は、自己判断で中止せず、直ちに医師に連絡してください。


薬物療法以外の治療法:非薬物療法

非薬物療法(薬に頼り過ぎないケアの重要性)
生活環境の整備
認知機能の維持・向上
コミュニケーション
食事・水分
睡眠
社会参加の促進

「薬さえ飲めば治る」ものではありません。

脳への刺激や生活環境の調整といった「非薬物療法」を組み合わせることで、薬の効果を底上げし、生活の質(QOL)を維持できます。

科学的根拠のある非薬物療法

最新のガイドラインでも推奨されているアプローチです。

  1. 認知機能訓練: 計算ドリルだけでなく、料理や買い物の計画など「頭を使いながら作業する」ことが有効です。
  2. 運動療法(デュアルタスク): 「歩きながらしりとりをする」など、運動と認知課題を同時に行うことで、脳の血流が増加し、神経細胞の活性化が期待できます。
  3. 回想療法: 昔の写真や道具を見ながら思い出を語り合うことで、感情の安定や記憶の活性化を図ります。
  4. 社会参加: デイサービスや趣味のサークルで「人と話す」「役割を持つ」ことは、最強のリハビリです。孤独は認知症の進行を早めます。

薬に頼りすぎないケア:生活環境と習慣

生活環境の整備

認知症の方は環境変化に弱く、不安を感じやすい状態です。

  • 安心できる空間: 部屋を整理整頓し、トイレの場所を明るく表示する。
  • スケジュールの可視化: 大きな時計やカレンダーを目につく場所に置く。
  • 睡眠リズム: 昼夜逆転を防ぐため、日中は日光を浴びて活動し、夜はカフェインを控えてリラックスできる環境を作ります(睡眠中のアミロイドβ排出を促します)。

コミュニケーションのコツ「ユマニチュード」的視点

  • 正面から: 後ろから声をかけず、視線を合わせてゆっくり話す。
  • 触れる: 話すときは肩や腕に優しく触れ、安心感を伝える。
  • 肯定する: 失敗を指摘したり否定したりせず、「大丈夫ですよ」と共感する姿勢がBPSD(暴言・暴力など)を防ぎます。

まとめ

認知症治療において、新薬の登場は確かに希望の光です。

しかし、ここまで解説してきた通り、特効薬はいまだ存在せず、薬には必ず「副作用」のリスクが伴います。

特に見落とされがちなのが、内臓への負担です。

薬を長期的に服用することは、薬の分解・解毒を担う「肝臓」に強い負荷をかけ続けます。
肝臓が疲弊して代謝機能が落ちると、体内毒素の排出が滞ったり、栄養がうまく回らなくなったりすることで、結果的に脳の機能低下(認知症状の悪化)につながる悪循環を生むリスクがあるのです。

だからこそ、私たちコナーズでは、体への負担が大きい薬だけに頼るのではなく、人間が本来持っている力を引き出す「非薬物療法」を強く推奨しています。

食事、運動、そして適切なケア環境。

これらを整えることで、薬に頼らずとも穏やかな生活を取り戻せる可能性は、みなさんが思っている以上に大きいはずです。

「薬の量を減らしたい」
「体に負担をかけない方法で、家族の笑顔を取り戻したい」

そのようにお考えの方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。

薬に頼りすぎない、その方に合った最適なケアの方法を一緒に見つけましょう。


Q&A

Q1. 最新の薬(レカネマブ・ドナネマブ)は誰でも使えますか?

A1. いいえ、誰でも使えるわけではありません。「アルツハイマー型認知症による軽度認知障害(MCI)または軽度の認知症」の方で、検査によってアミロイドβの蓄積が確認された方のみが対象です。中等度以上進行している場合は対象外となります。

Q2. 薬の副作用で「認知症が悪化した」ように見えることはありますか?

A2. はい、あります。例えばアリセプトなどの意欲を出す薬が効きすぎて、イライラや徘徊が増えることがあります。また、肝臓などの内臓疲労により体調が悪化し、それが認知機能の低下として現れることもあります。薬を飲んでから様子が変わった場合は、無理に継続せず医師に相談してください。

Q3. 認知症の薬はずっと飲み続けなければなりませんか?

A3. 決して「一度飲み始めたらやめられない」ものではありません。副作用が強く出ている場合や、非薬物療法で状態が安定している場合は、医師と相談の上で減薬・断薬が可能なケースも多々あります。


認知症の薬に不安がある方、非薬物療法について詳しく知りたい方は、無料相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

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