はじめに:介護の不安、一人で抱えていませんか?
ご家族が認知症と診断された方、あるいはご自身にその兆候を感じている方、大きな不安や戸惑いを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
「認知症になったら、もうどうしようもないのでは…」
「介護の負担が大きすぎる…」
そんな風に、先の見えない不安に押しつぶされそうになっていませんか?
介護の現場では、認知症介護に大きな負担を感じ、悩みを抱えながらも、誰に相談すればいいのか分からず、一人で抱え込んでしまっている人がたくさんいます。
この記事では、認知症介護の強い味方である「介護保険」について、メリット・デメリット を中心に、利用できるサービスや知っておくべき全知識を、分かりやすくお伝えします。
介護保険制度のキホン!使えるサービスを徹底解説
介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えるための公的制度です。
40歳以上になると介護保険料の納付が義務付けられ、介護が必要になった際には、要介護度(介護の必要度)に応じたサービスを、原則1割(所得に応じて2~3割)の自己負担で利用することができます。
申請からサービス利用開始までの流れ
介護保険サービスを利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。
認定の申請からサービス利用までの流れは、次の通りです。
- 申請:
お住まいの市区町村の窓口に申請します。 - 認定調査:
調査員が自宅などを訪問し、心身の状態や生活状況を調査します。 - 審査・判定:
調査結果と主治医意見書をもとに、介護認定審査会で要介護度が判定されます。 - ケアプラン作成:
要介護1~5と認定された方は、ケアマネジャーに依頼してケアプランを作成します。
要支援1・2の方は、地域包括支援センターが、または地域包括支援センターから委託を受けたケアマネジャーが介護予防ケアプランを作成します。 - サービス利用開始:
ケアプラン・介護予防ケアプランに基づき、サービス事業者と契約し、サービスの利用を開始します。
要介護認定の申請は、窓口に直接行ってもできますが、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すれば、申請代行もお願いできますし、早期に介護保険サービスについて検討することができます。
申請から要介護認定の結果が出るまで、およそ1~2か月かかるので、このどちらかには早めに相談することをおすすめします。
結果が出るまでの間は、暫定ケアプランを作成することで、介護保険サービスを利用することができます。
ただし、利用する量などにある程度の制限が生じる可能性があるので、ケアマネジャーに相談しましょう。
居宅サービス:自宅で受けられる介護サービス

自宅にいながら受けられる介護保険サービスを、居宅サービスと言います。
居宅サービスにはどんなものがあるか、確認していきましょう。
訪問介護
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪れ、食事、入浴、排せつなどの身体介護や、掃除、洗濯、調理などの生活援助を行います。
要介護者の中には、簡単な掃除や買い物も適切にできない場合があり、それを訪問介護で補うことは非常に有意義です。
認知症で、同じものを毎日買ってきてしまう方がいて、自宅内は魚の腐った臭いで充満していましたが、ヘルパーさんのご尽力で、冷蔵庫の中が整い、臭いもなくなったということがありました。
全国で見ても、似たようなケースは決して少なくないでしょう。
注意点としては、生活援助のサービスは、要介護認定を受けていないなどの健康な同居者がいる場合は利用できないという制限があるということです。
訪問入浴介護
訪問入浴介護は、その名の通り、自宅で入浴介助することに特化したサービスです。
自宅のお風呂に入ることが難しい人のために、専用の浴槽を積んだ入浴車で自宅に伺い、入浴の介助をします。
水道だけ使わせてもらう必要がありますが、入浴車にある機械を通して瞬間的にお湯を沸かしてお湯をはります。
認知症の人でも基本的に利用できますが、介助を受けて暴れてしまうことがあると、ケガにつながるので注意が必要です。
認知症かどうか…というよりは、身体的に、ヘルパーの手を借りても自宅のお風呂に入れないなどの状態にある場合に、訪問入浴介護を利用することをおすすめします。
訪問看護
看護師が自宅を訪れ、健康チェックや薬の管理、尿カテーテルの管理など医療的なケアなどを行います。
医療上必要に応じ、お風呂の介助など日常的な支援も依頼することができます。
こちらも認知症か否かではなく、医療上必要か否かで利用を判断することになります。
利用に至るまでの手続きも煩雑なので、ケアマネジャーの手伝いが不可欠です。
訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が自宅を訪れ、機能訓練などを提供します。
自宅でできるリハビリとして注目されているサービスです。
リハビリの内容は、筋力や体力向上などの基礎的な訓練から、お風呂や外出など生活動作のための訓練など、幅広く行います。
「昔のように自分で料理をしたい」という目的のために訪問リハビリを受け、見事達成されたケースもあります。
「リハビリをしたいけど、デイサービスに行くのはちょっと…」という方などにおすすめです。
また、デイサービスなどでは、自宅の状況に合わせた訓練をしにくい場合があるので、そちらも考慮したいところです。
こちらも訪問看護同様、手続きが煩雑なので、ケアマネジャーへの相談が必須と言えるでしょう。
通所介護(デイサービス)
通所介護は、自宅ではなく、デイサービスに通い、食事、排泄、入浴、レクリエーションや軽い運動などの支援を受けられるサービスです。
自宅で入浴ができない、外出や人と接する機会がない、家族が仕事で不在の間が心配などの悩みの解消を目的に利用されます。
基本的に送迎はデイサービス側でしてくれます。
送迎時間はデイサービスによりますが、9時前後に迎えに来て、16時前後に帰宅する場合が多いです。
ご希望とデイサービスの体制によっては、ご家族で送迎したり、例えばお昼ご飯を食べたら帰宅(送りも要相談)という利用者さんもいます。
通所リハビリテーション(デイケア)
通所リハビリテーションは、介護老人保健施設(※)などで行われるデイケアと呼ばれるサービスで、イメージとしては、リハビリテーションに特化したデイサービスと考えていただければ良いでしょう。
デイサービスでもリハビリ器具を揃えているところがありますが、デイケアでは、多彩なリハビリ器具を揃え、医療の状況を確認しながら、理学療法士や作業療法士によって実施されます。
デイケアで行われるのが「リハビリテーション」、デイサービスで行われるのが「機能訓練」と言い分けることが多いです。
※介護老人保健施設とは、医学的管理の下、在宅復帰に重点を置いた介護施設で、医療法人が運営している場合が多いです。
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所生活介護では、1泊から介護施設等に宿泊して、日常生活上の支援や機能訓練を受けられます。
デイサービス同様、入浴の問題やご家族の不在などの他、ご家族が休息をとるために利用する方が多く、介護負担の軽減に一役買っています。
昨今では完全個室の施設も多いので、プライバシーが気になる方も安心して利用できるようになっています。
ありがたいことに、ショートステイ利用中のリハビリパンツやテープ式オムツ、尿とりパッドは全て施設が負担するので、こだわりのオムツがない限りは、任せてしまう方が良いでしょう。
ショートステイを利用できる施設の種類はいくつかありますが、短期入所生活介護は特別養護老人ホーム(※)などを利用します。
介護老人保健施設の場合、同じショートステイと一くくりにされますが、正式には「短期入所”療養”介護」と言います。
※特別養護老人ホームとは、要介護3以上の方が入所できる介護施設で、リハビリよりも、日常生活の支援に重点を置いた、「終の棲家」とも言われています。
福祉用具貸与
車いすや特殊寝台(介護ベッド)などの福祉用具をレンタルできます。
何割負担か(1~3割)にもよりますが、車いすひとつ見ても、安いものは月々200~500円から選んで借りることもできます。
車いすを購入する場合、1つ5~6万から数十万円するので、介護保険でいかに安く済ませられるかがわかります。
他にも杖、歩行器、手すりなど様々な福祉用具があり、非常に便利になっていますが、車いすや介護ベッドなど、一定の福祉用具には、要介護2以上の認定を受けていないと保険が適用されないなどの制限があるので、注意が必要です。(特例で保険適用になる場合もあります)
また、一部を除くトイレや入浴用などの福祉用具は「特定福祉用具販売」と言い、レンタルではなく購入のみとなっています。
ですが、例えばポータブルトイレでは、安いものなら3,000円少々で買える(1割負担の場合)ので、かありお得と言えるでしょう。
他に、工事による手すりの設置や段差解消などには、「介護保険住宅改修」が利用できます。
これは、工事費(材料費等込み)20万円までは介護保険による補助が出るというもので、20万円かかった場合、実質支払い額は2万円で済みます。
例えば、手すりをレンタルしていて、その場所に固定の手すりを付けたいと思ったら、ケアマネジャーに相談してみてください。
地域密着型サービス:住み慣れた地域で受けられるサービス

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で、できる限り自立した生活を続けられるよう支援するために創設されたサービスで、その地域に住む要介護・要支援者が対象となります。
地域密着型サービスには、以下のような種類があります。
地域密着型通所介護(地域密着型デイサービス)
地域密着型通所介護は、簡単に言うと、デイサービスの小規模版的なものです。
利用の基本的な流れは概ね同じではありますが、通常の通所介護が定員19人以上であるのに対し、地域密着型通所介護は18人以下となっています。
これは、よりアットホームな空間を目指すためであり、調理や畑仕事など、個々の生活に沿った活動支援を受けやすい仕組みになっています。
私が関わった方の中には、認知症のために家事の一切をしなくなった元漁師の男性が、地域密着型通所介護の職員付き添いの下、見事な魚捌きを披露したというケースがあります。
それを見ていた他の利用者の盛り上がりはもちろん、ご本人のはつらつとした笑顔が印象的でした。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
定員は地域密着型通所介護と同じで、利用の流れも基本的には変わりませんが、認知症の症状によって他のデイサービスになじめなかった方などのための、認知症の方限定のデイサービスです。
認知症の診断を受けていなくても、認知機能低下が認められていれば、利用が可能です。
デイサービスに行くのを嫌がるなどの悩みにも、丁寧に対応してくれるのでおすすめですが、サービスの名前に「認知症」と入っているので、認知症の方本人にしたら、「認知症デイサービス」という名前だけで抵抗を感じてしまうかもしれません。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護では、5~9人の認知症の方が、アットホームな空間の中で共同生活を送る支援をするサービスです。
「施設に入居する」という形ではありますが、意外にも、居宅サービスとして扱われています。
施設なのに居宅…矛盾しているようですが、手伝いのある賃貸やシェアハウスと言うべきか、基本的には自分たちで家事等行いながら、できないところを職員がカバーしつつ、共同生活を送るというものです。
利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 医師から認知症の診断を受けている
- 要支援2、要介護1以上
- 65歳以上(場合によっては60歳以上も)
要介護1以上というのは、一応は要介護5(最も状態が重い)も含まれますが、要介護3以上になった時点で特別養護老人ホームへの転居を検討される場合が多いようです。
小規模多機能型居宅介護
「通い」を中心に、「泊まり」「訪問」の各サービスを組み合わせ、24時間365日、柔軟なサービスを提供します。
つまり、デイサービスとショートステイとヘルパーのサービスが1つの施設から提供されます。
通常であれば、同じ建物の中にこの3つのサービス事業所があったとしても、それぞれ職員は違う人が配置されています。
対して、小規模多機能型居宅介護の場合、各サービスを見慣れた職員が提供してくれるので、利用者としては安心できるサービスと言えます。
利用に当たっては、もしすでに居宅のケアマネジャーが担当として付いている場合、小規模多機能型居宅介護専属のケアマネジャーに担当を変更することになります。
また、小規模多機能型居宅介護には、医療ニーズへの対応が不十分なデメリットがありました。
医療ニーズが高い方にも対応できるよう、利用者への「訪問看護」の機能を加えた「看護小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
24時間365日、定期的な訪問と随時の対応により、在宅生活を支えるサービスです。
オペレーターが常駐し、緊急時にも迅速に対応します。
言い換えると、通常のホームヘルパーによる支援に加え、24時間の相談受付、相談後に時間を問わずヘルパーが駆け付け、必要に応じた支援をするというものです。
(相談から駆け付けるまでの時間は、事業所の状況により異なります)
また、オプション的に、医療ニーズのある方に対して訪問看護を合わせて利用することもできます。
このサービスが生まれた経緯として、以前は要介護者の生活を24時間支援する仕組みが不足していたこと、医療と介護の連携が不十分であったことが挙げられます。
夜中に転んで動けなくなった時、ご家族の介護だけではベッドまで戻れなかったりすると、夜間の支援がないために、朝まで床で過ごす…ということも、よくある話です。
そんな時に電話ですぐに相談でき、駆け付けてもらえるのなら、これほど心強いこともないですね。
承知いたしました。介護保険の施設サービスについて、さらに深掘りして説明文で解説いたします。
施設サービス:自宅での生活が難しい方のための生活の場

介護保険の施設サービスとは、自宅での生活が困難になった要介護者が、施設に入所し、24時間体制で介護や日常生活の支援、機能訓練、健康管理などを受けられるサービスです。
それぞれの施設ごとに特色があり、利用者のニーズや状態に合わせて選択できます。
介護保険で利用できる施設サービスは、主に以下の4種類です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養)
特養へは原則、要介護3~5の方が入所の対象になります。
(要介護1、2でもやむを得ない事情がある場合は特例入所が認められる場合があります)
この施設は終身利用を前提とした、生活の場を提供する施設です。
終の棲家とも言われています。
比較的費用が安く、人気が高いため、入所までに長期間待機するケースも少なくありません。
ただし、個室と多床室(2~4人部屋)で料金が違い、月で数万円違う場合もあります。
介護老人保健施設(老健)
要介護1以上の方が入所でき、在宅復帰を目指すための、リハビリテーションに重点を置いた施設です。
医師が常駐し、医学的管理のもとで、看護、介護、リハビリテーションなどが提供されます。
あくまでも「在宅復帰」を目的としているため、終身利用は想定されておらず、リハビリテーションのために3~6ヶ月ほどで対処する方が多いです。
もちろん、状態に応じて長期間の入所を勧められる場合もあります。
病院などに入院されていて、退院が迫っているが、自宅での生活はまだ難しいと判断される場合、さらなるリハビリ期間を設ける為に老健を利用することは多いです。
入所費用は特養の個室と同程度、あるいはもう少し高めです。
介護医療院
要介護1以上の方で、長期にわたる療養が必要な方が対象で、医療と介護の両方のサービスを提供します。
「介護療養型医療施設」が、プライバシーへの配慮や看取りへの対応が不十分という課題から、2024年3月末に廃止となり、「介護医療院」に転換されました。
廃止してもすぐに施設がなくなるわけではなく、もともと入居されていた方で、手続き上すぐに介護医療院に移れないなどの人のために、経過措置も設けられています。
医療ニーズの高い高齢者の増加に対応するための施設であり、日常的な医学的管理や看取り、ターミナルケアなどの医療機能と、生活施設としての機能とを兼ね備えています。
特定施設入居者生活介護
上記の4施設以外に、介護付き有料老人ホームなどの特定施設に入居して受けるサービスとして、「特定施設入居者生活介護」があります。
自治体から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホーム(=特定施設)などがあり、入居する要介護者が、必要な介護サービスや支援を受けながら生活できます。
メリット
経済的負担を軽減
介護には、様々な費用がかかります。
しかし、介護保険を利用すれば、サービス利用料の自己負担は原則1割(所得に応じて2~3割)で済みます。
これにより、経済的な負担が大幅に軽減され、必要なサービスを利用しやすくなるでしょう。これは、介護の大きなメリットです。
例えば、”福祉用具貸与”の中でお話しした通り、車いすを購入しようとすると、安いものでも5~6万円かかります。
これを、通常のレンタルでは月数千円(事業所によっては日割りもあり)、介護保険でレンタルすれば月数百円の支払いで済むのです。
ヘルパーについても同様で、介護保険外でサービス提供している、いわゆるフリーランスの訪問介護事業所はありますが、1回分の利用料に数倍~十数倍の差があります。
介護保険料は必ず支払うものなので、そういう意味でも、介護保険を利用するメリットは大きいのではないでしょうか。
認知症の症状によっては…
介護サービスを利用する中で、ご本人の認知症が原因で、そのサービスのスタッフと何らかのトラブルが起こる可能性があります。
トラブルの可能性が自体は、介護保険内外問わず起こり得ますが、問題は、起こった時の対処法です。
介護保険外サービスのみを利用している場合、ご本人・ご家族と当該サービス事業者の2者でのみやりとりされることがほとんどなので、トラブルが起こっても、この2者間で話し合い、解決していかなければなりません。
ですが、ケアマネジャーには、この2者を仲介する役割もあります。
ケアマネジャーが担当についていれば、トラブル時に相談でき、解決に向けての協力者が増えるということです。
地域包括支援センターなどにも相談できますが、担当ケアマネジャーの方が、あなたとご家族の状況をよく理解できるので、より良い相談相手になってくれるでしょう。
デメリット
使えるサービスの量に制限がある
介護保険では、要介護度に応じて1カ月に利用できるサービスの限度額が定められています。
- 要支援1:5,032円
- 要支援2:10,531円
- 要介護1:16,765円
- 要介護2:19,705円
- 要介護3:27,048円
- 要介護4:30,938円
- 要介護5:36,217円
これを区分支給限度基準額(以下、限度額)と言います。
※この数字は1割負担の場合です。
例えば、要介護1の方が、デイサービスやショートステイ、福祉用具などを組み合わせて利用し、利用料が17,000円になったとします。
要介護1の限度額は16,765円なので、17,000円利用では、235円オーバーしていますね。
このオーバーした235円が実費負担となり(=1割負担ではなくなり)、2,350円になります。
つまり、17,000円分のサービスを利用した場合、「16,765+2,350=19,115円」の支払いになるのです。
※限度額にはデイサービスやショートステイの「食費等」は含まれず、実際の支払は「19,115円+食費等」になります。
この限度額に、ケアマネジャーだからわかる落とし穴があります。
先にお伝えしましたが、介護認定は、申請から認定まで、おおむね1~2か月かかります。
この「申請から認定まで」を「暫定期間」とされますが、この間も介護サービスの利用は可能です。
ご本人の現状を見て、ケアマネジャーなど専門家が「この方の認定はおそらく〇〇くらいだろう」という予測を立て、それに沿ったサービス利用計画(ケアプラン)を作ります。
熟練のケアマネジャーほどその予測は当たりやすいとは思いますが、時に、思いがけない認定結果が出てくる場合があります。
100%当たることは、まずないと思っていいでしょう。
もし、ケアマネジャーが「要介護2」と予測を立てて、必要と踏んで18,000円くらいのプランをったのに、結果が「要介護1」だった場合、10,000万円以上の実費負担が発生します。
それどころか、要支援1~2になることもあり得るのです。
なので、慣れているケアマネジャーであれば、「要介護1前後」など、ややアバウトに予測を立て、その最低ラインに収まるようにケアプランを立てると思います。
認定が出るまではそれに従い、その結果十分な限度額を得られたのであれば、今度はそれに沿ってサービスを調整していくことになります。
経済的に不安がある場合は、欲しいままにサービス利用を希望するより、ケアマネジャーとよく相談して、要望と経済面を考慮した、適切なサービスを選ぶと良いでしょう。
事務的な手続きが煩雑
先ほどお話しした通り、介護サービスには、ここまで紹介したような介護保険サービスの他、介護保険の適用外で提供されるものもあります。
保険外サービスにも相応のメリットはあるのですが、保険外サービスのみ利用する場合、ケアマネジャーがつかないことがほとんどです。
(ケアマネジャーに相談して、保険外サービスについて教えてもらうことはできます)
ある程度自立して生活されている方なら、それでも良いかもしれません。
ですが、介護保険サービスが必要になった場合、ケアマネジャーの存在は想像以上に重要なのです。
実のところ、ケアマネジャーに頼らなくても、要介護・要支援認定を受けている方であれば、介護保険サービスの利用は可能ですが、その手続きは煩雑で、個人で利用するには労力が重くのしかかる可能性があります。
そう聞くと、介護保険制度の利用に二の足を踏んでしまうかもしれませんが、ご心配はいりません。
ケアマネジャーを通せば、その手続きの一切をやってもらうことができます。
しかも、ケアマネジャーの報酬は介護保険の中から支払われているので、基本的に利用者側からケアマネジャーに支払う料金は一切ありません。
※今後の制度改正によっては、その限りではありません。
とにもかくにも、介護が必要になった時点で、まずはケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。
介護保険は「数ある選択肢のひとつ」
介護が必要になった時、多くの方がまず思い浮かべるのが「介護保険制度」ではないでしょうか。
確かに、介護保険は高齢者とそのご家族を支える重要な制度です。
しかし、介護保険制度はあくまでも数ある選択肢の1つであり、すべての人にとって最適な解決策とは限りません。
大切なのは、一人ひとりの状況やニーズに合った選択をすることです。
自分や家族にとって最適な選択をすることで、身体的・精神的・経済的な負担を軽減し、より良い生活を実現できます。
介護保険制度以外にも、高齢者やそのご家族をサポートする様々なサービスや制度が存在します。
これらを組み合わせて利用することで、介護保険だけではカバーしきれない部分を補い、より充実したサポート体制を構築できます。
ここでは代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
介護保険だけじゃない!知っておきたいその他の選択肢
- 自治体独自のサービス:
各自治体では、介護保険とは別に、独自の高齢者福祉サービスを提供している場合があります。
例えば、配食サービス、見守りサービス、外出支援、介護用品の支給など、内容は多岐にわたります。
お住まいの市区町村の窓口や、地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。 - 民間企業の介護サービス:
民間企業が提供する介護サービスも多様化しています。
保険外サービスとなるため、費用は全額自己負担となりますが、介護保険では利用できないサービスや、より柔軟な対応が可能な点がメリットです。
例としては、家事代行、訪問理美容、旅行の付き添いなど、ニーズに合わせたサービスを選択できます。 - 家族や親族によるサポート:
家族や親族によるサポートは、最も身近で心強い支えとなります。
しかし、介護は長期にわたることも多く、負担が集中しないよう、役割分担や休息の確保など、計画的に行うことが大切です。 - 地域のボランティアやNPO:
地域のボランティア団体やNPO法人などが、高齢者の生活支援や交流の場を提供している場合があります。
気軽に相談できる場所として、積極的に活用してみましょう。 - 医療保険制度:
医療的ケアが必要な場合は、医療保険制度の利用も検討しましょう。
持病の状態によっては、訪問看護や訪問リハビリテーションなどを医療保険で利用できる場合もあります。
同様に、介護保険で賄えない部分を障害に関する制度で賄う方法もあります。
自分に合った選択をするための3つのステップ
- 情報収集:
まずは、どのようなサービスや制度があるのかを知ることから始めましょう。
インターネットで調べるのもいいですが、介護保険含め、この分野は一般的に理解が難しいものばかりです。
市区町村の窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに相談し、情報収集を行うことが重要です。 - ニーズの明確化:
介護を受ける本人と介護をする家族、それぞれのニーズや希望を明確にしましょう。
「どのような生活を送りたいのか」「どのような支援が必要なのか」「何に困っているのか」などを具体的に洗い出すことが大切です。 - 専門家への相談:
ケアマネジャーなどの専門家に相談し、最適なケアプランを作成してもらいましょう。ケアマネジャーは、「2.ニーズの明確化」で考えた、ご本人の状況やニーズに合わせて、様々なサービスや制度を組み合わせた、最適なプランを提案してくれます。
選択肢を組み合わせ、最適なケアプランで負担軽減
介護保険制度を軸に、自治体のサービス、民間企業のサービス、家族のサポートなどを上手に組み合わせることで、一人ひとりに合った最適なケアプランを作成できます。
例えば、
- 日中はデイサービス(介護保険)を利用し、夕食は配食サービス(自治体)を利用する。
- 訪問介護(介護保険)で身体介護を受け、掃除や買い物は家事代行サービス(民間企業)を利用する。
- 月に1~2回はショートステイ(介護保険)を利用し、家族が休息を取れるようにする。
- 定期的に訪問看護(医療保険)を利用し、健康状態のチェックと医療的ケアを受ける。
- 月に数回、近所のボランティア団体が主催するサロンに参加し、人と関わる機会を作る。
このように、様々な選択肢を組み合わせることで、介護を受ける本人のQOL(生活の質)を高めると同時に、介護をする家族の負担を軽減することが可能となります。
まとめ
認知症介護と介護保険に関するQ&A
制度利用の基本
Q1: 家族が認知症と診断されました。何から始めればよいですか?
A. まずは、お住まいの市区町村にある「地域包括支援センター」に相談することから始めましょう。そこが、認知症介護のスタート地点となります。
ご家族が認知症と診断されると、何から手をつけていいのか分からず、大きな不安に包まれることと思います。しかし、一人で悩む必要はありません。公的な相談窓口が整備されています。
- 最初の相談窓口:「地域包括支援センター」
地域包括支援センターは、高齢者の健康、福祉、医療、生活に関するあらゆる相談を受け付ける無料の総合相談窓口です 。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が在籍しており、「認知症の症状で困っている」「介護保険について知りたい」といった初期の段階から親身に相談に乗ってくれます。 - 介護保険の入口:「要介護認定」の申請
介護保険サービスを利用するためには、まず「要介護(要支援)認定」を受ける必要があります。これは、どの程度の介護が必要かを公的に判定してもらう手続きです。地域包括支援センターでは、この複雑な申請手続きの案内や、ご本人・ご家族に代わって申請を行う「申請代行」も無料でサポートしてくれます 。 - 介護のパートナー:「ケアマネジャー」との出会い
要介護認定を受けると、介護プランを設計する専門家である「ケアマネジャー(介護支援専門員)」を選ぶことになります。地域包括支援センターは、お住まいの地域で活動しているケアマネジャーが所属する事業所(居宅介護支援事業所)のリストを提供し、紹介してくれます。ケアマネジャーは、ご本人とご家族の状況や希望を詳しく聞き取り、最適な介護サービスを組み合わせた「ケアプラン」を作成する、今後の介護生活における最も重要なパートナーとなります。
まずは「地域包括支援センター」に電話一本かけることから、具体的な支援への道が開かれます。
Q2: ケアマネジャーとは何をしてくれる人ですか?費用はかかりますか?
A. ケアマネジャーは、ご本人とご家族に寄り添い、最適な介護サービスを計画・調整する「介護の設計士」です。現在、ケアプランの作成にかかる自己負担は0円(無料)です。
ケアマネジャーの役割は多岐にわたりますが、主に以下の業務を通じて、利用者を全面的にサポートします。
- ケアプラン(介護サービス計画書)の作成:ご本人とご家族の希望や心身の状態、生活環境を詳しく聞き取り(アセスメント)、どのようなサービスを、いつ、どのくらい利用するかを具体的に計画します 。
- サービス事業者との連絡・調整:デイサービスや訪問介護といった各サービス事業者との連絡や利用調整、契約のサポートなど、煩雑な手続きを代行します。
- 定期的な状況確認とプランの見直し:月に一度はご自宅を訪問し、サービスの利用状況や心身の変化を確認します。状況に合わせてケアプランを柔軟に見直し、常に最適な状態を保ちます。
- 利用者と事業者の橋渡し:サービス利用中にトラブルや不満が生じた際に、利用者と事業者の間に入って問題解決をサポートする役割も担います。
費用について
ケアマネジャーが行うケアプラン作成や相談業務(居宅介護支援)にかかる費用は、全額が介護保険から給付されるため、利用者の自己負担は一切ありません 。
これは、適切なケアマネジメントが自立支援の要であると考えられているためです。
知っておきたい今後の動向
ただし、この自己負担ゼロという仕組みは、将来的に見直される可能性が議論されています。
国の財政状況や制度の持続可能性を確保する観点から、「ケアプランの有料化(1割負担の導入など)」が繰り返し検討されてきました 。
2024年度の制度改正では見送られましたが、今後の改正で導入される可能性は残っています 。
もし有料化されれば、利用者は費用を支払う分、より質の高いサービスを求めるようになり、ケアマネジャーの選択が今以上に重要になると考えられます。
現時点では無料で質の高い専門的サポートを受けられる、利用者にとって非常に有利な制度です。
安心してケアマネジャーに相談してください。
Q3: 担当のケアマネジャーと合わない場合、変更できますか?
A. はい、担当のケアマネジャーはいつでも変更することが可能です。ケアマネジャーとの信頼関係は良い介護の基本ですので、遠慮なく変更を申し出てください。
介護は長期にわたることが多く、ケアマネジャーはご本人やご家族のデリケートな情報にも触れる重要な存在です。
「相談しにくい」「希望をうまく汲み取ってくれない」「提案が一方的」など、相性が合わないと感じたままでは、満足のいくサービスは受けられません 。
ケアマネジャーを変更したいと考えた場合、以下の手順で進めるのが一般的です。
- まずは担当者・事業所に相談する 変更を決める前に、まずは現在のケアマネジャー本人、あるいはそのケアマネジャーが所属する事業所の管理者(責任者)に、感じている不満や要望を具体的に伝えてみましょう 。直接伝えることで、対応が改善され、問題が解決するケースも少なくありません。
- 変更の申し出と新しいケアマネジャー探し 話し合いをしても改善が見られない場合は、変更を申し出ます。変更方法は主に2つです。
- 同じ事業所内で担当者を変更してもらう:現在の事業所に他のケアマネジャーが在籍している場合、担当者だけを交代してもらう方法です。
- 事業所ごと変更する:現在の事業所との契約を終了し、新しい居宅介護支援事業所を探します。どこに相談すればよいか分からない場合は、最初に相談した地域包括支援センターに連絡し、別の事業所を紹介してもらうのがスムーズです 。
- 引き継ぎと新しい契約 新しいケアマネジャーが決まると、前任者から新しい担当者へ、ご本人の情報やこれまでの経緯が引き継がれます。これにより、サービスが途切れることなく、スムーズに移行できます 。事業所ごと変更する場合は、新しい事業所との契約手続きが必要です。
変更時の重要なポイント
変更を成功させるためには、「なぜ変更したいのか」「新しいケアマネジャーに何を期待するのか」を明確に伝えることが不可欠です 。あいまいな理由のままでは、次の担当者とも同じ問題が繰り返される可能性があります。要望をはっきりと伝えることで、より良い関係を築くことができます。
費用と手続き
Q4: 介護保険サービスは、具体的にいくらで利用できるのですか?
A. 介護保険サービスの自己負担額は、要介護度ごとに定められた月々の上限額(区分支給限度基準額)の範囲内であれば、原則としてかかった費用の1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります 。
介護にかかる費用は、ご家庭にとって最も気になる点の一つです。
制度の仕組みを理解することで、安心してサービスを利用できます。
- 自己負担割合:利用者負担の割合は、前年の所得によって決まります。多くの方は1割負担ですが、単身で年金収入などが年間280万円以上の方は2割、340万円以上の方は3割負担となります 。ご自身の負担割合は、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
- 区分支給限度基準額:これは、介護保険でまかなえるサービス費用の上限です。要介護度が高くなるほど、利用できるサービス量が増えるため、この限度額も高くなります。限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担(10割負担)となるため注意が必要です 。
要介護度別 区分支給限度基準額(1カ月あたり)
要介護度 | 支給限度額(保険適用分) | 自己負担額(1割の場合) | 自己負担額(2割の場合) | 自己負担額(3割の場合) |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
注意点:この表の金額は、あくまで介護サービスそのものの費用です。デイサービスやショートステイを利用した場合の食費やおむつ代、宿泊費などは保険適用外となり、別途実費で支払う必要があります。
Q5: 認定結果が出る前の「暫定ケアプラン」でサービスを利用する際の注意点は?
A. 最も注意すべき点は、想定していた要介護度よりも低い結果が出た場合、差額が全額自己負担になる金銭的リスクです。
要介護認定の申請から結果通知までは、通常1~2か月かかります。
しかし、その間も介護が必要な場合、「暫定ケアプラン」を作成してサービスを前倒しで利用することが可能です。
これは非常に便利な仕組みですが、大きな落とし穴もあります。
暫定ケアプランのリスク
暫定プランは、ケアマネジャーが「おそらくこのくらいの要介護度だろう」という予測(見込み)に基づいて作成されます 。
もし、この予測が外れて、実際に出た認定結果が予測よりも低かった場合、その差額分のサービス利用料は保険適用外となり、 全額(10割)を自己負担で支払わなければなりません 。
具体的な例
ケアマネジャーが「要介護2」(限度額197,050円)を予測し、それに合わせて月19万円分のサービスを利用する暫定プランを立てたとします。
しかし、実際の結果が「要介護1」(限度額167,650円)だった場合、限度額を超えた22,350円(190,000円 – 167,650円)分は、1割負担ではなく、22,350円をまるごと自己負担で支払うことになります。
1割負担分の16,765円と合わせると、その月の支払いは合計39,115円となり、想定外の出費が発生します。
専門家からのアドバイス
このリスクを避けるため、多くの経験豊富なケアマネジャーは、認定結果が出るまでは、予測される要介護度の最低ラインに収まるよう、やや控えめなプランを提案します。
ご家族としても、このリスクを十分に理解した上でケアマネジャーとよく相談し、「認定が出るまでは、本当に必要な最低限のサービスから始める」といった慎重な姿勢で臨むことが、予期せぬ経済的負担を防ぐための賢明な判断と言えるでしょう。
認知症の方への対応
Q6: 認知症の本人がデイサービスなどの利用を嫌がります。どうすればよいですか?
A. ご本人がサービス利用を嫌がるお気持ちは、非常によくあることです。無理強いはせず、まずはご本人の不安や羞恥心に寄り添い、拒否する理由を探ることが第一歩です。その上で、専門家と連携しながら、ご本人が受け入れやすい方法を試していくことが大切です。
認知症の方のサービス拒否は、単なる「わがまま」ではなく、以下のような複雑な心境が背景にあることが多いです 。
- 環境の変化への不安:慣れない場所や知らない人たちの中にいることへの強い不安感。
- プライドや羞恥心:「介護される」ことへの抵抗感や、入浴などで裸を見られることへの恥ずかしさ 。
- 目的が理解できない:認知機能の低下により、「なぜそこに行かなければならないのか」が理解できず、混乱している。
- 体調不良:言葉でうまく伝えられない不調(頭痛、倦怠感など)を抱えている 。
具体的な対応策 ご家族だけで解決しようとせず、ケアマネジャーやデイサービスの職員に相談し、チームで対応しましょう。
- サービスの形態を変えてみる: 大規模なデイサービスが合わない場合、定員が18名以下で家庭的な雰囲気の「地域密着型通所介護」や、認知症の方専門の「認知症対応型通所介護」を試すのが有効です。専門スタッフが認知症の特性を深く理解しており、一人ひとりに合わせた丁寧な対応が期待できます。
- 声かけや誘い方を工夫する: 「デイサービスに行くよ」という直接的な言葉ではなく、「お茶を飲みに行こう」「趣味の活動に出かけよう」など、本人が前向きになれるような言葉に言い換えてみましょう。
- 専門家の力を借りる: ケアマネジャーやデイサービスの相談員は、サービス拒否への対応経験が豊富です。見学や短時間の体験利用をセッティングしてもらったり、ご本人と相性の良さそうなスタッフに対応を依頼したりするなど、プロならではの視点で解決策を提案してくれます 。
- 無理強いしない: その日の気分や体調によって、受け入れられる時とそうでない時があります。拒否が強い日は無理強いせず、「また今度にしようね」と一度引くことも大切です。タイミングを見計らって、改めて声をかけてみましょう 。
大切なのは、ご本人の気持ちを尊重し、「あなたの味方だよ」という姿勢で寄り添い続けることです。
Q7: 認知症の人が入居できる施設にはどのような種類がありますか?
A. 認知症の方が利用できる施設は、目的や必要なケアのレベルに応じて複数あります。
代表的なのは「グループホーム」ですが、その他にも「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」などがあります。
それぞれの施設には特徴があり、ご本人の状態やご家族の希望に合わせて選択することが重要です。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特徴:認知症と診断された方が、5~9人の少人数単位で共同生活を送る施設です。「施設」というより「家」に近い家庭的な環境で、スタッフの支援を受けながら、食事の支度や掃除などの家事を分担して行います。住み慣れた地域で、顔なじみの関係の中で穏やかに暮らすことを目的としています。
- 対象者:要支援2以上で、医師から認知症の診断を受けている方。共同生活がある程度可能な方が対象となります。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養)
- 特徴:「終の棲家」とも呼ばれ、看取りまで含めた長期的な生活の場を提供する施設です。生活全般にわたる手厚い介護が24時間体制で受けられます。費用が比較的安いため人気が高く、入居待機者も多いのが現状です。
- 対象者:原則として要介護3以上の方。常に介護が必要で、在宅での生活が困難な方が対象です。
- 介護老人保健施設(老健)
- 特徴:病院での治療を終えた後、すぐに在宅復帰が難しい方が、リハビリテーションに集中的に取り組むための施設です 。医師や理学療法士などが常駐し、医学的管理の下で在宅復帰を目指します。
- 対象者:要介護1以上の方。あくまで在宅復帰が目的のため、入所期間は3~6か月程度が一般的で、終身利用はできません。
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
- 特徴:民間企業などが運営する有料老人ホームや軽費老人ホームのうち、都道府県から「特定施設」の指定を受けた施設です。入居者は、その施設のスタッフから介護保険を使った介護サービスを受けられます。施設ごとに設備やサービス内容、費用が多様で、選択肢が広いのが魅力です。
どの施設が最適かは、ご本人の認知症の進行度、必要な医療ケア、性格、そしてご家族の経済状況などによって異なります。
ケアマネジャーや地域包括支援センターとよく相談し、実際に見学をして、ご本人に最も合った環境を選ぶことが大切です。
制度の今後と展望
Q8: 2024年の介護保険制度改正で、私たち利用者に関わる主な変更点は何ですか?
A. 2024年度の介護保険制度改正は、超高齢社会に対応するため、「地域包括ケアシステムの深化」「自立支援・重度化防止」「介護現場の生産性向上」の3つが大きな柱です。利用者にとっては、より質の高いサービスや、切れ目のない支援体制が期待できる内容となっています。
具体的に利用者に関わるポイントは以下の通りです。
- 医療と介護の連携強化による「自立支援」の推進 これまでの介護サービスに加え、リハビリテーション、口腔ケア(お口の手入れ)、栄養管理を一体的に行い、高齢者の自立を支援し、重度化を防ぐ取り組みが強化されました 。例えば、全ての介護施設で口腔衛生管理が義務化されるなど、より専門的で総合的なケアが期待できます 。利用者にとっては、心身の機能を維持・向上させるための、より質の高いケアを受けやすくなります。
- 介護現場のDX化と人材確保 深刻な介護人材不足に対応するため、介護職員の給与を引き上げる処遇改善が行われました 。同時に、見守りセンサーや介護ロボット、ICT(情報通信技術)の活用を推進し、介護職員の負担を軽減する「生産性向上」への取り組みも始まっています 。これにより、職員が事務作業などから解放され、利用者一人ひとりと向き合う時間が増えることが期待されます。安定したサービス提供にも繋がる重要な変更です。
- 介護情報の電子化による「切れ目のない支援」 利用者の同意のもと、自治体、介護事業所、医療機関などがオンラインで必要な介護情報を共有できるシステム基盤の整備が進められています 。これが実現すれば、利用者が転院や転居をした際に、家族が何度も同じ説明を繰り返す手間が省け、よりスムーズで切れ目のないサポートを受けられるようになります 。
これらの改正は、制度を持続可能なものにしながら、サービスの質を高めていくことを目指すものです。
Q9: 今後、介護保険の自己負担はさらに増えるのでしょうか?
A. はい、その可能性は非常に高いと言えます。制度の持続可能性を確保するため、利用者の自己負担割合を引き上げる方向での議論が続いています。
日本の急速な高齢化に伴い、介護保険財政は年々厳しさを増しています。この状況に対応するため、国は給付と負担の見直しを継続的に行っており、今後の利用者負担増は避けられない流れとなっています。
具体的な見直しの動き
- 2割負担の対象者拡大
現在、自己負担が2割となるのは単身で年金収入などが年間280万円以上の方ですが、政府・厚生労働省はこの基準を引き下げ、2割負担の対象範囲を拡大する方針を固めています。早ければ2025年8月からの施行が検討されており、現在1割負担の方の一部が2割負担になる可能性があります 。これは、支払い能力のある方には応分の負担を求めることで、制度を支えていこうという考え方に基づいています。 - 将来的に検討される可能性のある項目
今回の改正では見送られましたが、今後も議論が続くと予想される項目がいくつかあります。- ケアプランの有料化:現在無料であるケアプラン作成に、1割程度の自己負担を導入する案です 。
- 要介護1・2のサービス見直し:比較的軽度な要介護1・2の方向けの訪問介護や通所介護を、全国一律の介護保険給付から、市区町村が運営する「総合事業」へ移行する案です。これが実現すると、市区町村の判断によってサービス内容や利用料が変わる可能性があります 。
これらの動きは、介護を受ける高齢者、特に中間所得層にとって、家計への影響が大きくなることを意味します。
これまで「介護費用は1割負担」という前提で考えていた方も、今後は2割負担になる可能性を視野に入れ、ご自身の年金収入や貯蓄などを確認し、長期的な視点で資金計画を立てておくことが、これまで以上に重要になっています。
介護保険だけに頼るのではなく、自治体独自のサービスや民間の保険・サービスなども含めた、多角的な備えが求められる時代に入ったと言えるでしょう。
「介護保険」重要ポイントまとめ
- 介護保険は、認知症介護の経済的・精神的負担を軽くする強い味方です。 介護サービスにかかる費用は、原則として1割(所得に応じて2~3割)の自己負担で利用できます。これにより、全額自己負担の民間サービスに比べて費用を大幅に抑えることができ、経済的な不安を軽減しながら必要な介護を受けることが可能になります 。
- 多様なサービスを組み合わせて、本人と家族に合った最適なケアプランを作れます。 自宅で支援を受ける「居宅サービス」(訪問介護やデイサービスなど)、住み慣れた地域で生活を続けるための「地域密着型サービス」(グループホームなど)、24時間体制のケアが受けられる「施設サービス」(特別養護老人ホームなど)といった多様な選択肢があります。これらを専門家と相談しながら組み合わせ、一人ひとりの心身の状態や生活スタイルに合わせた最適なケアを実現できます。
- メリットだけでなく、利用限度額や手続きの煩雑さといった注意点も理解しておくことが大切です。 介護保険で利用できるサービス量には、要介護度ごとに月々の上限額(区分支給限度基準額)が定められています 。また、認定結果が出る前にサービスを利用する「暫定ケアプラン」では、想定より低い要介護度と判定された場合に超過分が全額自己負担になるリスクがあるため注意が必要です 。
- 一人で悩まず、まずは「地域包括支援センター」や「ケアマネジャー」に相談しましょう。 介護に関する最初の相談窓口は、お住まいの地域にある「地域包括支援センター」です。無料で相談でき、要介護認定の申請代行も行ってくれます 。認定後は、ケアプラン作成の専門家である「ケアマネジャー」が担当につき、複雑な手続きやサービス事業者との調整を担ってくれます。現在、ケアマネジャーへの相談やケアプラン作成に自己負担は発生しません 。介護の悩みは一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが、ご本人とご家族の負担を軽くする第一歩です。
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