Last Updated on 2026年9月16日 by contact@konnors.net
デイサービスを急に行きたがらなくなる背景には、「見知らぬ場所への不安」「役割の喪失」「恥ずかしさ」といったご本人なりの切実な理由が隠れていることが少なくありません。
無理に行かせようと言いくるめたり叱ったりするのではなく、本人のこだわりや生活歴を施設スタッフと共有し、短時間の利用や見学から段階的に慣らしていくアプローチが負担軽減への近道です。
毎朝の「行かない!」という拒否に直面し、「このままでは共倒れになってしまう」と罪悪感と疲労で限界を感じているご家族に向けて、介護施設・在宅ケアマネジャーの両面から実践的な対応策をお伝えします。
この記事でわかること
- 本人がデイサービスやショートステイを行きたがらない心理的・身体的背景
- 無理強いを避けて関係性を守るための「段階的な慣らし方」
- 施設スタッフが対応しやすくなる「こだわり・生活歴情報シート」の共有法
- 朝の強い拒否を和らげる具体的な声かけ例(OK・NG対応表)
発信者・監修者情報
本記事は、リコケアコナーズのケアマネジャー・介護福祉士としての現場経験をもとに、ご家庭でできる生活環境の工夫や関わり方の視点を解説しています。
- 菅原 浩平(ケアマネジャー、介護福祉士)
- 菅原 嘉奈(ケアマネジャー、介護福祉士、認知症リハビリテーション専門士)
【ご確認事項】
本記事は生活環境の見直しやご家族の対応の工夫を提案するものであり、医学的な診断・治療・薬の調整については、必ず主治医や薬剤師へご相談ください。
※「今の対応や声かけが合っているか不安」「まずは現状を客観的に見直したい」という方は、記事の最後でご紹介している『家庭でできる認知症ケアの見直しチェックリスト』も状況整理にお役立てください。

1. なぜ本人はデイサービスを行きたがらないのか?心理と身体のサイン

行きたがらない拒否の言動は「わがまま」ではなく、ご本人が感じている強い不安や自尊心の揺らぎ、あるいは身体の不調のサインである可能性があります。
デイサービスを嫌がる姿を見ると、家族としては「せっかく手配したのに」「自分の時間がなくなってしまう」と焦りや苛立ちを感じてしまうのは当然のことです。
しかし、認知症のある方や高齢のご本人の視点に立つと、そこには言葉にできない切実な理由が存在している場合があります。
① 「知らない場所」「知らない人」への根源的な恐怖
認知機能の変化により、記憶や見当識(時間や場所の認識)が低下している場合、「どこへ連れて行かれるのかわからない」「知らない人に囲まれるのが怖い」という強い警戒心が生まれます。
大人であっても、突然見知らぬ集団の中に放り込まれる状況は大きなストレスです。
② 「お世話される場所」という屈辱感や羞恥心
長年、一家の大黒柱として働いてきたり、家事を切り盛りしてきた自負がある方ほど、「年寄り扱いされたくない」「幼稚園のお遊戯のようなことはしたくない」という抵抗感を抱きやすくなります。
役割を奪われ、「何もできない人」として扱われるように感じてしまうことが、拒否の一因になることがあります。
③ 脱水・疲労・排泄不安などの身体的ストレス
実は見落とされがちなのが、身体的なコンディションです。
- 水分摂取が不足していて頭が重い・ぼんやりしている
- 前夜の睡眠が浅く、朝からだるさが残っている
- 便秘でお腹が張っている、または「移動中に失禁したらどうしよう」という不安がある
- 送迎車の揺れや車酔いに対する不安
言葉で「体がだるい」「トイレが心配」と訴えられない場合、それが「行きたくない!」という強い言葉や怒りとなって表れる場面も見られます。
水分が不足すると、血流の低下や意識のぼんやり感、活動意欲の低下を招き、朝の「動きたくない・行きたくない」という強い抵抗につながる場合があります。
日頃の水分摂取と認知症ケアの関係性については、以下の記事で詳しく解説しています。
あわせて読みたい:認知症ケアにおける水分改善の重要性と水分補給のポイント
2. やってはいけないNG対応とご家族の心の整え方

正論での説得やその場しのぎの嘘は、不信感を招き状況を悪化させやすいため、まずは家族自身の休息と心の安全を優先する視点を持ちましょう。
朝の忙しい時間帯に「行かない」と頑なになられると、つい感情的になってしまいがちです。
しかし、特定の対応はご本人の防衛反応を強め、かえって拒否を固定化させてしまうことがあります。
逆効果になりやすいNG対応
- 正論で説き伏せる:
「みんな行っているんだから」「行かないと足腰が弱るよ」といった正論は、ご本人にとっては「責められている」と感じるきっかけになりやすいです。 - その場しのぎの嘘をつく:
「ちょっとドライブに行くだけだから」「病院に行く」と言って連れて行くと、施設に着いた瞬間に裏切られた感覚を抱き、スタッフや家族への不信感が強まる傾向があります。 - 無理やり車に乗せる:
身体拘束に近い形で力づくで連れて行くと、恐怖体験として感情の記憶に深く刻まれ、次回の拒否がさらに強まるリスクがあります。
家族が「行かせる方法に疲れた」と感じたときの視点
デイサービスを利用する大きな目的の一つは「介護者の休養(レスパイトケア)」です。
「本人のために行かせなければ」と背負い込みすぎると、断られたときの疲弊が倍増します。
「今日は体調や気分の波が合わなかっただけ」「一旦仕切り直そう」と捉え、無理強いを避ける勇気を持つことも大切です。
もし家族だけで抱えきれない限界を感じたときは、決して一人で抱え込まず、ケアマネジャーへ「朝の送り出しが難しく、家族が限界であること」をありのままに伝えてください。
3. デイサービスのスタッフに渡す「情報シート」の活用法

本人の過去の職歴やこだわりをまとめた情報シートを施設へ共有することで、スタッフがご本人に合った役割や声かけを準備しやすくなります。
リコケアコナーズが現場経験を通じて強く推奨しているのが、施設への「事前情報シート」の提供です。
デイサービスのスタッフも、初対面のご本人が何を好み、何にプライドを持っているかが分からない状態では、一般的なレクリエーションを勧めるしかありません。
事前に以下のような情報をA4用紙1枚程度にまとめてケアマネジャーやデイの生活相談員に共有しておくと、受け入れ時の関わり方が大きく変わる一助になります。
| 共有項目 | 記載内容の例 | 施設側でのアプローチ例 |
| 職歴・長年の習慣 | 元大工で道具の手入れが得意。毎朝の新聞を読むのが日課。 | 「机の補修やタオルの整理をお願いできませんか?」と役割を依頼する。 |
| 呼び方・プライド | 「〇〇ちゃん」と呼ばれるのを嫌う。「〇〇さん」と呼んでほしい。 | 人生の先輩として敬意を持った丁寧な言葉づかいで接する。 |
| こだわりの話題 | 地元の歴史、家庭菜園(特にトマト作り)、昭和歌謡。 | 会話の糸口として話題を振り、リラックスできる時間を作る。 |
| 不安になりやすい状況 | 大きな声で話しかけられること。急かされること。 | 視線を合わせてゆっくり静かに話しかけるよう徹底する。 |
施設をご本人にとって「お世話される場所」ではなく、「自分の得意分野を発揮できる場所」「役割がある場所」に変えていくための橋渡しをご家族が担うことで、本人の居心地の良さにつながりやすくなります。
4. 無理強いしない「段階的な慣らし方」のステップ

最初から「1日利用」を目指さず、見学やお試しなど、ハードルを極限まで下げた段階的ステップを踏むことが定着への近道です。
利用を急ぐあまり、初日から朝から夕方までのフル利用を予定すると、ご本人にとっては長時間の苦痛になってしまうことがあります。
ショートステイやデイサービスを嫌がる場合、以下のような段階を踏むことをおすすめします。
- ステップ1:家族と一緒に見学へ行く(滞在15〜30分)
「ちょっと知り合いのところに挨拶に行こう」「お茶を一杯飲みに行こう」と誘い、雰囲気を肌で感じるだけで帰宅します。 - ステップ2:昼食のみ、または入浴のみの短時間利用
滞在時間を1〜2時間に限定し、「美味しいご飯を食べに行こう」「広くて温かいお風呂に入りに行こう」というピンポイントの目的で利用します。 - ステップ3:午前中のみ(半日)の利用
食事が終わったら昼過ぎに帰宅するスケジュールにし、「疲れる前に帰れる」という安心感を積み重ねます。 - ステップ4:通常利用への移行
「施設に行っても必ず家に帰ってこられる」という見通しが持てるようになってから、通常の利用時間へと延ばしていきます。
※事業所によって短時間利用の受け入れ体制や送迎範囲が異なるため、担当ケアマネジャーに「慣らし期間として短時間利用が可能か」を相談してみましょう。
5. 朝の「行かない!」を和らげる声かけと基本ケア

朝の声かけを工夫するとともに、水分補給や室温調整などの生活環境を整えることで、本人の不安を和らげやすくなります。
朝の送り出しをスムーズにするためには、直前の言葉選びだけでなく、起床時からの身体ケアや環境づくりが重要な土台となります。
OK・NG声かけの比較
| 場面 | NGな声かけ例 | OKな声かけ例 |
| 起き抜けの誘い | 「早く起きて!デイサービスに遅れちゃうよ!」 | 「おはようございます。今日はいいお天気ですね。まず温かいお茶を飲みましょう」 |
| 出発前の促し | 「みんな待ってるんだから、準備して出かけるよ」 | 「〇〇先生(またはスタッフ名)から、ちょっと手伝ってほしいことがあると連絡がありましたよ」 |
| 強い拒否の瞬間 | 「行かないと困る!何のために契約したの!」 | 「行きたくない気分なんですね。不安なことがありますか?少し座って話しましょう」 |
声かけの土台となる「基本ケア」の見直し
言葉だけで誘導しようとする前に、以下の生活環境を整えておくことが、本人の穏やかな覚醒と行動につながります。
- 水分補給:
起床後、コップ半分〜1杯程度の温かい白湯やお茶を促し、脱水による意識のぼんやり感を軽減する。 - 排泄のゆとり:
出かける直前のトイレ誘導は焦りを生むため、出発の30分前までに済ませられるよう時間配分を整える。 - 室温と照明:
部屋が薄暗かったり寒かったりすると活動意欲が低下するため、カーテンを開けて日光を取り入れ、心地よい室温を保つ。 - 前夜の記録:
「何時に寝て何回起きたか」を簡単にメモしておき、睡眠不足が疑われる日は無理をさせずケアマネジャーに相談する。
6. ショートステイを嫌がる場合の理由と対策

数日間の宿泊を伴うショートステイは「捨てられるのではないか」という強い見捨てられ不安を生みやすいため、帰宅の見通しを明確にすることが肝要です。
デイサービス以上に拒否が強くなりがちなのがショートステイです。
数日間にわたる滞在は、ご本人にとって「家に二度と戻れないのではないか」という恐怖に直結することがあります。
ショートステイを嫌がる主な要因
- 見捨てられ不安:
家族から見放されたと感じてしまう。 - 夜間の不安:
自宅と異なる暗闇や足音、知らない環境で夜間に目覚めたときの混乱(夜間せん妄の一因)。 - 持ち物への違和感:
普段と違う衣類や日用品に対する落ち着かなさ。
対策のポイント
- カレンダーに「帰宅日」を明確に書く:
「〇月〇日のお昼にお迎えに行きます」と太い文字で目に見える場所に記し、見通しを持たせます。 - 使い慣れた私物を持参する:
普段使っている枕、毛布、家族の写真、愛用の湯呑みなど、本人の五感に馴染んだアイテムを施設に持ち込みます。 - 最初は「1泊2日」から始める:
短期間で確実に帰宅できる体験を重ね、「泊まっても必ず家に帰れる」という信頼関係を築きます。
7. 専門職や主治医へ相談する目安

拒否が続く場合や急激な変化が見られる場合は、事業所の変更や身体疾患の可能性も含めて、早めに専門職へ状況を相談しましょう。
どれだけ工夫を重ねても拒否が続く場合、ご家族の努力不足ではありません。
以下のようなサインが見られるときは、速やかにケアマネジャーや主治医に相談する目安となります。
- 拒否に伴い攻撃的な言動や興奮が顕著になった場合
- 特定の事業所の日だけ極端に拒否が強く、本人が怯えるような様子がある場合(事業所の雰囲気や他利用者との相性の問題)
- 急に行きたがらなくなり、活気の低下や食欲不振など体調の変化が見られる場合(潜在的な感染症や脱水、内科的疾患の疑い)
ケアマネジャーは「小規模で落ち着いたデイサービス」「機能訓練に特化した短時間デイ」「本人の趣味に合ったデイ」など、別の選択肢を提案できます。
また、薬の影響や病状の変化が疑われる場合は、ご家庭での様子をメモしたうえで主治医や薬剤師へ相談することが安心につながります。
急に行きたがらなくなったり、感情の起伏が急激に激しくなったりした場合は、病状の進行や他の身体疾患が影響している可能性もあります。
特に気仙沼市や近隣エリアで「どの医療機関に相談すべきか迷っている」「もの忘れ外来の受診を考えている」というご家族は、地域の相談窓口や病院情報をまとめた以下の記事も参考にしてみてください。
あわせて読みたい:気仙沼市周辺で認知症の相談ができる病院・もの忘れ外来ガイド
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 朝、送迎車が来ても「絶対に玄関から出ない」と言い張るときはどうすればいいですか?
A. 送迎スタッフにその場の状況をありのまま伝え、スタッフに対応を委ねてみてください。
家族の言うことは聞かなくても、制服を着た第三者の「〇〇さん、お迎えに上がりましたよ」という声かけには応じるケースが多々あります。
それでも頑なに拒否される場合は、その日は無理に出発させず、キャンセルして休養に切り替える判断も選択肢の一つです。
Q2. 認知症の初期で、本人が「デイサービス=認知症の人が行く場所」と認識して嫌がります。
A. 「デイサービス」という言葉を使わず、「地域のカルチャースクール」「体操教室」「クラブ活動」など、本人の自尊心を傷つけない表現で説明してみましょう。
また、本人が若年であったり自立度が高い場合は、リハビリ特化型やフィットネス型など、同世代や活動的な方が多い事業所を選び直すことも有効な手段です。
Q3. デイサービスを変えるのはケアマネジャーに迷惑でしょうか?
A. 迷惑になることは一切ありません。事業所の規模(大規模か小規模か)、スタッフの関わり方、利用者の男女比や雰囲気によって、ご本人の馴染みやすさは大きく異なります。
「どうしても合わないサイン」が見られる場合は、遠慮なく担当ケアマネジャーに現状を共有し、事業所の見直しを検討してもらいましょう。
公的機関・信頼できる情報源(出典・参考)
- 厚生労働省|公費による介護サービス(通所介護・短期入所生活介護等の概要)
- 厚生労働省|認知症施策の推進(認知症施策推進基本計画)
- 国立長寿医療研究センター|認知症ケアと生活環境支援に関するガイドライン
介護の負担を一人で抱え込まず、まずは状況を整理してみませんか?
毎朝の「行きたくない」という言葉に悩み、送り出すたびに心がすり減ってしまう……そんな苦しい日々を過ごされていませんか。
ご本人がデイサービスを嫌がるのには理由があります。
そして同時に、介護を担うご家族が休息を必要としているのも紛れもない事実です。
無理に説得しようとする前に、まずはご本人の体調や日頃の生活リズム、ご家庭の環境を客観的に見直してみることが、解決の第一歩になる場合があります。
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【免責事項】
※本チェックリストは薬の自己判断による変更・中止を勧めるものではありません。
気になる症状や体調の変化がある場合は、必ずかかりつけ医・薬剤師・担当ケアマネジャーへご相談ください。
執筆・監修:リコケアコナーズ
- 菅原 浩平(ケアマネジャー、介護福祉士)
- 菅原 嘉奈(ケアマネジャー、介護福祉士、認知症リハビリテーション専門士)