執筆: コナーズ(ケアマネジャー・介護福祉士)
監修: 菅原 加奈(認知症リハビリテーション専門士)
「最近、親の性格が急に変わってしまった…」
「まだ若いのに、同じ行動ばかり繰り返している…」
もしこのような変化を感じたら、それは単なる老化やわがままではなく、「前頭側頭型認知症(FTD)」のサインかもしれません。
前頭側頭型認知症は、4大認知症の一つでありながら、アルツハイマー型とは大きく異なる特徴を持つため、対応に苦慮されるご家族が非常に多いのが現状です。
この記事では、現役ケアマネジャーと認知症リハビリテーション専門士の視点から、前頭側頭型認知症の特有の症状、診断方法、そして具体的なケアと治療法について、分かりやすく解説します。
正しい知識を持つことが、不安を減らし、適切なケアへの第一歩となります。
1. 前頭側頭型認知症(FTD)とは?

前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia: FTD)とは、脳の「前頭葉」と「側頭葉」が集中的に萎縮することで発症する認知症の総称です。
- 前頭葉の役割: 思考、判断、感情のコントロール、理性的な行動
- 側頭葉の役割: 言語の理解、記憶、聴覚、感情
これらの部位がダメージを受けることで、「記憶」よりも先に「人格」や「言葉」、「社会的な行動」に変化が現れるのが最大の特徴です。
また、65歳未満で発症する若年性認知症の割合が高いことも知られています。
2. 【比較表】アルツハイマー型認知症との決定的な違い
AI検索や読者が最も知りたい「アルツハイマー型との違い」を整理しました。
最大の違いは、「初期症状」と「迷子になるか(場所の見当識)」です。
| 特徴 | 前頭側頭型認知症 (FTD) | アルツハイマー型認知症 |
| 初期症状 | 人格変化・行動異常・言語障害 | 記憶障害(物忘れ) |
| 道迷い | 迷わない (空間認識は保たれる) | よく迷う (空間認識が低下) |
| 病識(自覚) | ないことが多い | 初期は「忘れた」という自覚がある |
| 行動パターン | 常同行動 (同じ行動を繰り返す) | 徘徊 (目的なく歩き回る) |
| 発症年齢 | 65歳未満(若年性)に多い | 加齢とともに増加 |
ケアマネの視点:
「道に迷って帰ってこれない」ということがなく、むしろ「毎日同じ時間に同じコースを散歩しないと気が済まない」といったこだわりが見られる場合は、アルツハイマー型よりも前頭側頭型を疑う根拠の一つになります。
3. 前頭側頭型認知症の3つのタイプと症状

「前頭側頭葉変性症」という大きな枠組みの中で、症状の現れ方によって主に3つのタイプに分類されます。
① 行動異常型(bvFTD)
特徴:社会的なルールの欠如、人格変化
前頭葉の萎縮が顕著なタイプです。
- 万引きや暴力: 善悪の判断がつかなくなり、衝動的な行動をとる。
- 常同行動: 毎日同じ時間に同じものを食べる、同じコースを歩くなどのルーチンに固執する(時刻表的行動)。
- 無関心・無気力: 身だしなみに気を使わなくなり、周囲への興味を失う。
- 食行動の変化: 甘いものを異常に欲しがる、濃い味付けを好む、過食など。
② 意味性認知症(SD)
特徴:言葉の意味がわからなくなる
側頭葉の前方が萎縮するタイプです。
- 語義失語: 「時計」を見てもそれが何かわからない、「犬」という言葉を聞いても意味が理解できない。
- 発語は流暢: 言葉の意味はわからなくても、お喋り自体は流暢であることが多いです。
- 独特な対人距離: 人懐っこくなったり、話をごまかして笑ってやり過ごすような態度が見られることがあります。
③ 進行性非流暢性失語(PNFA)
特徴:言葉がスムーズに出てこない
- 発語の障害: 言葉の意味は理解できているが、舌や唇をうまく動かせず、たどたどしい喋り方になる。
- 文法の誤り: 「てにをは」の間違いなど、文章構成が崩れる。
4. 診断の流れと検査方法
診断は、専門医(神経内科や精神科)による総合的な判断が必要です。
主な検査
- 問診: 家族からの情報(行動の変化、性格の変化)が最も重要です。
- 認知機能検査:
- MMSE / MoCA: 記憶力だけでなく、言語能力や注意機能を数値化します。
- 画像検査:
- MRI / CT: 前頭葉や側頭葉の「萎縮」を目視で確認します。
- SPECT(スペクト): 脳の血流を調べます。萎縮がはっきりしない初期段階でも、血流低下により発見できる場合があります。
5. 治療法とケアのポイント(リハビリ専門士監修)

現時点で、前頭側頭型認知症を根本的に完治させる薬はありません。
しかし、適切なケアと対症療法で、症状を穏やかにすることは可能です。
薬物療法
- 対症療法: 興奮や衝動性を抑えるために、抗精神病薬やSSRI(抗うつ薬)が使用されることがあります。
- 注意点: アルツハイマー型で使われる「アリセプト(ドネペジル)」などは、かえって興奮を強める場合があるため、慎重な処方が求められます。また、パーキンソン症状を併発している場合でも、L-ドパが効きにくいケースがあります。
非薬物療法・ケアのコツ
認知症リハビリテーション専門士の視点から、ご家庭でできる工夫を紹介します。
- 常同行動(ルーチン)を逆手に取る
- 「同じことの繰り返し」を無理に止めさせるとパニックになります。安全な範囲であれば、そのルーチンを生活リズムとして組み込みましょう。
- 環境調整
- 過食がある場合は、目につく場所に食べ物を置かない。
- 万引きのリスクがある場合は、馴染みの店に事情を説明しておく。
- 肯定的なコミュニケーション
- 理屈で説得しようとしても困難です。本人の言葉や感情を受け止め、否定せずに対応します。
6. よくある質問(FAQ)
検索ユーザーが疑問に思いやすい点をQ&A形式でまとめました。
Q1. 前頭側頭型認知症の初期症状で最も目立つものは何ですか?
A. 物忘れよりも、「性格の変化」や「社会性の欠如」です。以前は礼儀正しかった人が急に怒りっぽくなったり、万引きなどの反社会的行動をとったりすることがあります。
Q2. 遺伝する病気ですか?
A. 一部に家族性の発症例(遺伝性)も報告されていますが、日本においては遺伝性のケースは比較的稀です。多くは孤発性(遺伝に関係なく発症)です。
Q3. 治る可能性はありますか?
A. 進行性の病気であり、現代医学では完治は難しいとされていますが、難病等由来のものを除き、認知機能を回復させる可能性は十分にあります。
Q4. パーキンソン病と似ているのですか?
A. 一部のタイプでは、筋肉のこわばりや動作緩慢などのパーキンソン症状が出現することがあります。しかし、パーキンソン病治療薬(L-ドパ)の効果が限定的である点が異なります。
まとめ
前頭側頭型認知症(FTD)は、記憶障害が中心のアルツハイマー型とは異なり、「人格・行動・言語」に大きな変化が現れる病気です。
- 前頭葉・側頭葉の萎縮が原因
- 行動異常型・意味性認知症・進行性非流暢性失語の3タイプがある
- 常同行動(こだわり)や食嗜好の変化が特徴的
ご家族だけで抱え込むと、精神的な負担が非常に大きい病気です。
「もしかして?」と思ったら、早めに専門医を受診し、我々ケアマネジャーなどの専門職にご相談ください。適切なサービスを利用することで、ご本人もご家族も安心して暮らせる環境を整えていきましょう。
著者・監修者プロフィール
菅原 浩平

現役ケアマネジャー・介護福祉士。認知症ケアの現場経験を活かし、等ブログを運営。
監修:菅原 嘉奈

認知症リハビリテーション専門士。浩平の妻であり、専門的な医学・リハビリの観点から記事を監修。
認知症は、患者さんだけでなく、そのご家族にとっても大きな負担となる病気です。
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