「最近、親が食事に時間がかかるようになった」
「飲み込みが悪そうだから、細かく刻んであげよう」
親思いのあなたなら、そう考えるのが自然です。
でも、実はその「刻み食(きざみしょく)」が、誤嚥(ごえん)のリスクを高め、認知症の進行を早めてしまう可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、私たちリコケア コナーズが重視している「食と栄養のケア」について。
安易に流動食やペースト食に頼らず、最後まで「口から食べる幸せ」を守るための知識をお伝えします。
1. なぜ「刻み食」が危険なのか?(誤嚥のメカニズム)

多くの人が「細かくすれば飲み込みやすい」と誤解しています。
しかし、口の中でパラパラと散らばる刻み食は、実は高齢者にとって最も難易度が高い食事形態の一つです。
私たちの喉は、「食塊(しょっかい)」といって、ある程度まとまったひとかたまりの物を飲み込むようにできています。
刻んでパサパサになった食材は、口の中でまとまらず、気管にスポッと入りやすくなってしまうのです。
- ムセる原因: 細かい破片が喉の奥に張り付きやすい。
- 誤嚥性肺炎のリスク: 本人がムセていなくても、気づかないうちに肺に入ってしまう「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」を引き起こすことも。
プロの視点では、安易に刻むよりも「柔らかく煮込んで形を残す」「あんかけでまとまりを良くする」など、「喉越しの良さ」を重視します。
こうした食事形態の判断は、私たちの施設の共同代表であり、「認知症リハビリテーション専門士」の菅原嘉奈が中心となって行っています。
彼女が現場でどのように利用者様の変化を見逃さずにケアしているのか、その原点はこちらの記事で紹介しています。
▶ 妻・嘉奈が「認知症リハビリテーション専門士」になった理由
2. 「噛まない」と脳は一気に衰える

食事の役割は、栄養補給だけではありません。
「噛む(咀嚼)」という行為自体が、最強の脳トレ(リハビリ)なのです。
- 脳への血流ポンプ: 噛むことで、脳への血流は通常の何倍にもアップします。
- 覚醒レベルの向上: ガムを噛むと目が覚めるように、しっかり噛むことは脳をシャキッと覚醒させます。
逆に言えば、「安易にペースト食にする=脳への血流ポンプを止める」ことと同義です。
認知症改善を目指すなら、可能な限り「噛む」機能を維持し続けなければなりません。
私たちが目指すのは、「現状維持」ではなく「改善」です。
食事、運動、そして意識の持ち方を変えることで、認知症の症状はどこまで良くなるのか。
私たちの挑戦の全貌はこちらにまとめています。
3. 気仙沼は「脳活食材」の宝庫!(サンマ・メカジキ)

では、何を食べるべきか?
ここで、水産のまち・気仙沼の強みが最大限に活きます。
認知症予防に欠かせない栄養素は、サプリメントよりも、地元の美味しい魚から摂るのが一番です。
① サンマ(DHA・EPAで脳細胞を活性化)
気仙沼といえば、やはりサンマ。
東京の有名な「目黒のさんま祭」で振る舞われるサンマも、ここ気仙沼から送られているのは有名な話ですよね。
あの脂の乗ったサンマに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPAは、脳の神経細胞を保護し、情報の伝達をスムーズにする働きがあります。
「やっぱり気仙沼のサンマは日本一だねぇ」
そんな会話と共に旬の味を噛みしめることは、記憶を呼び覚ます刺激にもなります。
② メカジキ(筋肉を作るタンパク質)
そして、気仙沼が水揚げ日本一を誇るメカジキ。
冬場、「メカジキのハーモニカ(背ビレの付け根)」の煮付けが食卓に並ぶご家庭も多いのではないでしょうか。
メカジキは良質なタンパク質の塊です。
高齢になると、どうしても肉類を敬遠しがちですが、筋肉が落ちると「噛む力」も「飲み込む力」も弱ってしまいます。
クセがなく柔らかいメカジキは、高齢者のタンパク源として非常に優秀な食材です。
4. 安全に食べるための「コナーズ流」3つのポイント

いくら栄養があっても、いきなり硬いものを食べさせるのは危険です。
私たちが現場で実践しているステップをご紹介します。
- まずは「水分」で潤す:
口の中が乾燥していると、唾液が出ず、物を噛めません。
食前の一杯の水が大切です。
実は、食事の前の水分補給には、唾液を出す以外にも「覚醒レベルを上げて誤嚥を防ぐ」という重要な役割があります。
私たちがなぜここまで水にこだわるのか、その理由はこちらをご覧ください。
▶ 「急にボケた?」と思ったらまず水! - 姿勢を整える:
顎が上がっていると気管が開き、誤嚥します。
足の裏をしっかり床につけ、少し前傾姿勢で食べましょう。 - 「美味しいね」と声をかける:
「食事=作業」にしないこと。
「美味しいね」「いい匂いだね」と楽しむことで、消化を助ける唾液の分泌が促されます。
エピローグ:食べることは、生きる意欲そのもの
「もう噛めないから…」と諦める前に、一度ご相談ください。
入れ歯の調整、食事形態のひと工夫、そして水分の見直しで、再び普通食(常食)に戻れた事例はたくさんあります。
気仙沼の美味しい魚を、最期まで自分の口で味わってほしい。
それが、私たちの願いです。
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