「介護保険が変わると聞いたけれど、私たちの地域はどうなるの?」
「サービスが減らされたり、使いにくくなったりするんじゃないか……」
ご家族様からこのような不安の声を聞きました。
2025年末に国(厚生労働省)から発表された方針は、介護保険制度が始まって以来の「大転換」とも言える内容でした。
一言で言えば、これまで「日本全国どこでも同じ」だったルールが、2027年から「住む場所によって変わる」ことになりそうなのです。
この記事では、宮城県気仙沼市で活動する現役ケアマネジャー兼・認知症リハビリテーション専門士の視点で、この複雑な改正ポイントを分かりやすく噛み砕いて解説します。
そして、「制度がどう変わっても、家族が安心を手に入れるための唯一の方法」についてもお伝えします。
介護保険は「全国一律」から「地域ごとのルール」へ

これまでの介護保険制度には、「全国一律のサービス基盤を整備する」という大原則がありました。
東京でも、沖縄でも、そしてここ気仙沼でも、基本的には同じ基準、同じ仕組みでサービスが提供されてきました。
しかし、2027年度(令和9年度)の改正に向けた議論で、この原則が見直されることになりました。
背景にあるのは「地域ごとの事情」の格差
理由はシンプルです。
高齢者が急増しサービスが足りない「大都市部」と、高齢者が減り始めサービス事業所の維持すら難しい「過疎地」とでは、抱えている問題が全く違うからです。
そこで国は、全国を以下の3つに分類し、それぞれに合ったルール(処方箋)を適用する方針を固めました。
- 中山間・人口減少地域(過疎地など)
- 大都市部
- 一般市等
つまり、「あなたの住んでいる地域がどの区分か」によって、利用できるサービスの形が変わる時代が目の前まで来ているのです。
具体的に何が変わる?「人口減少地域」3つのポイント

特に大きな変化が予想されるのが、私たちが住むような「中山間・人口減少地域」です。
事業所が撤退してサービスがなくなる……という最悪の事態を防ぐために、国はかなり大胆な緩和策を打ち出しています。
1. 少ない人数でも運営OK?「特例サービス」の登場
これまでは、サービスを運営するために必要な職員数などが厳格に決まっていました。
しかし、担い手不足の地域では、ICT(見守りセンサーやタブレットなど)を活用することを条件に、人員配置の基準を緩めた新しい「特例サービス」が作られる予定です。
2. 訪問介護が「定額制」になるかも?
現在、ヘルパーさんが家に来てくれる訪問介護は、使った分だけ支払う「出来高払い」が基本です。
しかし、利用者が少ない地域では事業所の収入が安定しません。
そこで、事業所が経営の見通しを立てやすくするために、「包括評価(定額報酬)」を選択できる仕組みが検討されています。
利用者側からすれば、月額定額制のようなイメージになるかもしれません。
3. 自治体がサービスを委託する「公設民営」モデル
「民間事業者に任せておくだけでは、採算が合わずに撤退されてしまう」 そんな地域では、市町村が責任を持って事業者に運営を委託する(お金を出してサービスを維持してもらう)モデルが導入されます。
これまでのような「自由競争」から、「地域のインフラとして守る」形へのシフトです。
気仙沼のような地方都市に住む家族への影響は?

「基準が緩くなる」「選択肢が減る」と聞くと、サービスの質が落ちるのではないかと不安になる方もいるでしょう。
正直にお伝えすると、都市部のように「たくさんの事業所から好きなところを選ぶ」という自由は、地方では難しくなっていく可能性があります。
しかし、これはネガティブな側面だけではありません。
国が「ルールを変えてでも、地方の介護サービスを絶対に消滅させない」と決断したことは、地域で暮らし続けるためのセーフティネットが強化されたとも捉えられます。
制度が複雑になる分、これからは「地域の事情に精通し、新しいルールを使いこなせるケアマネジャー」を味方につけることが、ご家族にとって非常に重要になってきます。
【Q&A】2027年改正についてよくある質問
ここで、よく寄せられる疑問にお答えします。
Q. この変更はいつから始まりますか?
A. 順調に進めば、次の介護保険制度改正のタイミングである2027年度(令和9年度)から本格的にスタートする予定です。
詳細は2026年の国会審議などで詰めていくことになります。
Q. 利用料(自己負担)は増えますか?
A. 今回のニュースは「サービスの提供体制」の話がメインです。
ただし、これとは別に「2割負担の対象者を広げるかどうか」という議論はずっと続いています。
負担増の可能性は消えていないため、今後の動向に注意が必要です。
Q. 今から家族ができる準備はありますか?
A. まずは情報のアンテナを張っておくこと。
そして何より、「制度やサービスに頼りすぎなくても済む状態」をご本人と一緒に作っておくことが、一番の準備になります。
制度が変わっても揺るがない「最強のリスクヘッジ」とは
ここまで制度のお話をしてきましたが、最後に一番大切なことをお伝えします。
介護保険制度は、国の財政や人口動態によって、これからもコロコロと変わります。
「サービスが減るかもしれない」「負担が増えるかもしれない」 そんな、自分たちではコントロールできない外部の要因に、ご家族の生活が振り回されるのは本当に辛いことです。
ですが、たった一つだけ、ご家族自身がコントロールできることがあります。
それは、「ご本人の症状」です。
もし、認知症の症状が改善し、コミュニケーションが取れるようになり、穏やかに過ごせる時間が増えたらどうでしょうか?
訪問介護が定額制になろうが、事業所が少し遠くなろうが、「介護の手間」そのものが減っていれば、制度の変化に一喜一憂する必要がなくなるのです。
「認知症は治らないから、制度に頼るしかない」
その常識こそが、皆さんの不安の根本原因です。
制度の変化を恐れる前に、その常識を疑ってみてください。
私は現場で、正しいアプローチによって症状が劇的に改善し、笑顔を取り戻したご家族を何組も見てきました。
どんなに制度が変わっても、ご本人の回復こそが、家族を守る最強の盾になります。
もし、今の介護に限界を感じているなら、制度が変わるのを待つのではなく、今すぐ目の前の「症状改善」に向き合ってみませんか?
▼「認知症は治らない」という常識を覆す。
薬に頼らず、脳科学に基づくアプローチで症状を改善させる具体的メソッドを知りたい方はこちら
